埼臨技会誌 Vol
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【背景】 平成22年4月30日付の厚生労働省医政局長通知「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」が出され、日本臨床衛生検査技師会(日臨技)では、病院検査室において提出される検体を受け、正確性・再現性の高い検査結果報告に努めるだけでなく、病棟等の直接的医療現場で、より患者の側に則し医療の一端を担う病棟臨床検査技師(仮称)の役割が重要と考え広く呼び掛けたが、ほとんどの施設で反応がないことから、急遽日臨技で実地検証を行った。 【検討委員会】 平成26年9月に第1回病棟検査業務実施委員会を開催し、様々な検証を行い、薬剤師の病棟業務定着にも着眼しつつ、4年に渡り検討してきた。その間に臨床検査技師による検体採取の業務認証もあり、病棟検査業務へ加速するかに見えたが、その後一向に進んでいないのが現状である。 【臨床検査技師がどのように思われているのか】 検討施設で、医師、看護師、患者へ臨床検査技師についてアンケートを行った。 医師からは、臨床検査技師が病棟にて専門を生かして活躍することに期待度があった。 看護師からは、看護師の業務とオーバーラップする業務に関して運用に不安があるが、人手不足の応援には期待があった。しかし、検査技師に関して、「気難しそう」「偉そう」「怖い」といった声も上がっていた。 患者からは、外来・病棟採血を実施している施設では、「上手い」「専門性に富んでいる」との声の反面、どのような業務を行っているのか解らないという声も半数程度であった。 【業務認証】 病棟検査業務については、多くの施設で施設側から依頼されることは少なく、進める手段がつかめない現状でもあるのは確かであるが、根本的に臨床検査技師が業務認証に積極的でないのが原因ではないだろうか。 ここ数年多くの施設で、看護師不足のため内視鏡技師の依頼は多く受けているはずであるが、ほとんど受けようとしていないのが現状で、現在では臨床工学技士(CE)が増員して積極的に内視鏡技師を行っている。それでも臨床検査技師は危機感を持たず、検体採取に関しても「できる範囲で」のスタンスをとっている。 薬剤師は医薬分業を掲げ、病院薬剤師と調剤薬剤師に分かれ、病院薬剤師は病棟薬剤師へ、調剤薬剤師は訪問薬剤師へシフトしている。CEは心臓カテーテル(治療)、内視鏡技師、呼吸療法士と活躍の場を常に広げ続けている。リハビリテーションスタッフは、呼吸療法の関係上肺機能検査を、またリハビリによる改善を確認するための超音波検査を始め ている。診療放射線技師も、内視鏡検査によって非常に少なくなった胃検査や注腸検査の代わりに、放射線治療もしくは超音波検査へシフトしている。また、それらは患者の側に即し、医療スタッフからも認められている内容である。 【臨床検査技師のスタンス】 依頼されない業務を拡大することは非常に難しい。しかし、依頼された業務を引き受けなければ、業務の拡大はない。この一言に尽きる。「人手が足りないから受けられない」は単なる言い訳に過ぎない。現在行っている仕事が自分たちの仕事と思っているのであればそれは手遅れ!である。 2025年度問題は既に言われていること、踏ん反り返って構えている状況ではない。これから取りざたされる検体検査の精度管理について考える暇もないのではないだろうか。 自動分析装置の較正や精度管理は各施設で行っているが、多くの施設は機器メーカーとつながっており、本当に管理しているのは機器メーカーと言って過言ではない。検査技師は管理血清で測定範囲内であることを確認し測定しているだけで、較正が取れない場合や測定範囲内におさまらない場合は、機器メーカーの対応が必要であり、検査技師は無力である。AI(人工頭脳)の導入も考えれば、検体検査に臨床検査技師の必要性が見えてこない。むしろ、機器の修理やメンテナンスを考慮すれば、CEの方が優れている。 そんな先の無い検体検査(ただ検体を置いて測定するだけ)に人員配置する必要はなく、知識を生かした研究開発やAI導入のコンサルタントをおこなうべきである。 一番必要なスタンスは、求められれば(依頼)、今行っている業務を辞め(縮小)ても確実に受け入れ、臨床検査技師のフットワークの良さを見せること。我々検査技師は非常に勤勉であり、受け入れた業務に対しても期待以上の結果を示せると考える。その結果、施設にとってチーム医療の一環を担うことに繋がり、言うまでもなく必要であれば増員もある。 【最後に】 上記、臨床検査技師のスタンスに述べた、求められれば断らない! 今行っている仕事が国家認定を有した臨床検査技師が行う必要があるかも検証する時代! その検証には言い訳は一切必要ない。 まだまだ、必要とされて(求められて)いる仕事は幾らでもあり、「臨床検査技師さんが担当してくれれば安心できる」といった信頼を得るように努力して欲しいと願う。 49業務認証(拡大)ができない臨床検査科(部)は生き残れない 並木 薫(東京医学技術専門学校) 並木 薫…(東京医学技術専門学校) 業務認証(拡大)ができない臨床検査科(部)は生き残れない

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