埼臨技会誌 Vol
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臨床化学た。入院時尿中L-FABP値383.8μg/g・Cr。脱水・尿路感染症によるAKIとして抗生剤開始。その後経過良好で尿培養結果も陰性化し、感染症の治療薬として用いた抗生剤を中止した時点で尿中L−FABP値を測定、28.0μg/g・Crと改善傾向を認めた。【考察】腎臓内科では検査件数全体の95%を占めたが、その理由として以下のことが考えられる。1つめは、迅速な測定と結果報告が可能であり、腎疾患の早期発見や予後、治療効果の判定に有用であること。2つめは、今回報告した症例のように、治療薬による腎機能への影響が迅速に反映されると考えられる。しかし、腎臓内科に比べて他科における実施状況はかなり少なく、多くの診療科で実施することが今後の課題として挙げられた。【結語】尿中L-FABPの検査は院内において多くの診療科で実施する意義が高いと考えられる。現在、心臓血管外科にて術直後のAKI早期発見として尿中L−FABP検査依頼が増加傾向となっている。今後もその有用性についても検討していく。連絡先:048-442-1111(内線2530)混濁血清処理剤フリーゲンⅡによる生化学検査への影響当院での尿中L-FABPの現状とその有用性65(A法),1/2容量添加後3分混和(B法),2/3容量添加後6分混和(C法)の3通りとした.混和後は全て2,000gで10分の遠心分離後,上清をLABOSPECT 008(日立ハイテクノロジーズ)で測定した. ② ①での結果から3%以上変動した項目に対して,各項目3濃度のプール血清を調製し,フリーゲン2/3容量添加後の混和時間を1分~6分の1分間隔で各5回処理を行い,処理前と各混和時間での処理後の測定値を比較した.【結果】①A法とC法での処理後の測定値は処理前に対して, AST:103%,103%, ALT:83%,71%,γ-GT:96%,94%,Zn:94%,92%,CRP:93%,91%であり,他の項目は2%未満の変動率であった.A法とB法の変動率の差は全項目で1%未満であった.②フリーゲン添加後の混和時間1分→6分での処理後の測定値は処理前に対して, AST:104%,CRP:92%程度で混和時間によらず一定の変動であった.一方, ALT:96%→72%,γ-GT:98%→93%,Zn:98%→93%と系統的に低下した.【結論】フリーゲン処理による影響と混和時間の差による影響が一部の項目で認められた.事前検討にて影響の確認が必要な手法であると考えられた. 連絡先048-873-4111【目的】強度の乳び検体は生化学検査において,光学的な測定干渉や容積置換により測定値に影響を及ぼす場合がある.当検査室では過去に中性脂肪が10,000mg/dLを超える症例を経験し,希釈測定による対応では限界があることを認識させられた.そこで生化学検査および血漿蛋白検査には影響を与えないとされている混濁血清処理剤フリーゲンⅡ(以下フリーゲン,SIEMENS)による処理手順の導入を検討した.なお,フリーゲン中の化学物質(HCFC-225)はオゾン層破壊物質であり,2020年までの全廃が定められている.【対象】2018年4月~2018年6月の期間で臨床検査を終了した乳びを認めない残余患者血清を使用した.検討対象項目は,TP,ALB,AST,ALT,LD,ALP,γ-GT,ChE,CK,CK-MB,AMY,LIP,UN,Cre,UA,T-Bil,D-Bil,Na,K,Cl,Ca,Mg,IP,Fe,UIBC,Zn,CRP,IgG,IgA,IgM,GAとした.なお,本研究はさいたま市立病院倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号A2824号).【方法】①フリーゲン処理前の測定値を100%とし,処理前後の測定値を比較した(n=40).処理条件は,血清1容量に対してフリーゲン2/3容量添加後,試験管ミキサーで3分混和【はじめに】L型脂肪酸結合蛋白(以下L-FABP)は、ヒトの近位尿細管上皮細胞に発現している。近位尿細管が虚血や酸化ストレスなどの負荷を受けると発現が亢進し、尿中への排出が増加する。また、腎疾患の進行および予後は尿細管障害の程度と相関することが知られており、尿中L-FABPの測定は腎疾患の早期発見だけでなく、治療効果の判定、急性腎障害(AKI)の重症化リスクの判別にも有用である。今回、当院での尿中L−FABP検査実施状況及び治療薬による腎機能低下早期発見症例を経験したので報告する。【方法】測定試薬:ノルディア®L-FABP(積水メディカル)、2017年度(2017年4月~2018年3月)1年間における尿中L−FABP検査件数を集計し、診療科別に分類した。また、尿中L−FABP値が大きく変動した患者を集計し、患者状況について調査を行った。【結果】2017年度の1年間で尿中L−FABP検査を458件実施した。診療科別の内訳は腎臓内科95%(433件)、救急外来4%(17件)、その他1%(8件)であった。集計した中で、腎臓内科にて尿中L−FABP値が大きく変動した患者が見られ処理前後比較とフリーゲンⅡ添加後の混和時間の検討◎大地 康文1)、小林 巧1)、長澤 英一郎1)、齋藤 美由紀1)、手塚 康晴1)◎大地 康文1)、小林 巧1)、長澤 英一郎1)、齋藤 美由紀1)、手塚 康晴1)さいたま市立病院1)さいたま市立病院1)◎鄭 智誾1)、小林 梓1)、千葉 真1)、安野 優香1)、塚原 晃1)、高山 好弘2)◎鄭 智誾1)、小林 梓1)、千葉 真1)、安野 優香1)、塚原 晃1)、高山 好弘2)戸田中央医科グループ 戸田中央総合病院1)、TMG本部 臨床検査部2)戸田中央医科グループ 戸田中央総合病院1)、TMG 本部 臨床検査部2)EntryNo. 4EntryNo. 85混濁血清処理剤フリーゲンⅡによる生化学検査への影響当院での尿中L-FABPの現状とその有用性処理前後比較とフリーゲンⅡ添加後の混和時間の検討化-1(第1会場 9:30~10:07)化-2(第1会場 9:30~10:07)

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