埼臨技会誌 Vol
78/135

[はじめに] 心電図変化を引き起こす原因として,心筋梗塞や心筋症のST変化とHb濃度との関連性.2,胸部誘導V1~V6のどの誘導でST部分のどのタイミングで最も変化が見られるか.なお,STレベルの計測は心電計(フクダ電子社製)による自動計測とし,同じくフクダ電子社製心電図ヴューワー(FEV-80R)にて各計測値の抽出を行った. [結果] 今回の検討において,1,Hb濃度とSTレベルとの間には有意な相関関係は認めなかった.2,ST変化の傾向では,ST変化を「上昇」,「低下」,「変化なし」の3つに分けた結果,全38症例中28例でV5誘導のSTj部分に最も多くST低下を示した.[結語] Hb濃度7.0g/dL以下の貧血症例でV5誘導のSTj部分に高頻度にST低下が見られた.ECGでST低下が見られた場合,冠動脈疾患以外に高度貧血の存在も指摘でき得る可能性が示唆された.    連絡先048-474-7211(内線452)ACSのH-FABP感度は72%,AMIのH-FABP感度は80%,U-APのH-FABP感度は53%であった.発症2時間以内のACSのH-FABP感度は67%,すべてがAMIであった.STdep/flatT所見のACSは93%,うちAMIは36%,ACSのH-FABP感度は46%,冠動脈狭窄率90%以上が86%であった.【考察】虚血症状を発症した症例の心電図を判読した中で,STdep/flatT所見は25%で,93%がACSであった.うち64%がU-APと診断され,86%が高度冠動脈狭窄を認めた.心筋灌流異常により起こる虚血カスケード反応の心電図変化は,虚血症状よりも早い段階で生じる.従って,虚血症状を発症している場合は,心電図の僅かなST-T変化を見落とさず,適切に判読することが重要である.また,他の検査などを併用することで,各段階の異常を早期に発見することが診断,治療に繋がることを再認識することができた.今後,新規の左脚ブロックや脚ブロックの二次性ST-T変化にも注意し,心電図を判読していきたい.      貧血症例での安静時心電図変化の検討76など各種心疾患が挙げられる.その他,心疾患以外でも心電図変化を示すことが知られているものの一つに貧血がある.救急の現場などでは採血結果が出る前に心電図検査を行うことが多く,安静時心電図検査(ECG)で貧血の存在を推測することが可能となるのか,また貧血症例の心電図的特徴があるのかをSTレベルに注目し検討した.[対象・方法] 対象は2016年10月~2017年3月の間にECGと採血を同日に施行し,Hb濃度が7.0g/dL以下の症例38例(平均年齢72±28歳,男性21例,女性17例)とした.ECGでストレインパターン波形や脚ブロック,ペースメーカー波形を呈した症例,経胸壁心臓超音波検査で局所壁運動異常がみられた症例は除外した.検討項目は次の2項目とした.1,胸部誘導V1~V6のST開始点(STj),QT時間をもとに分割したST部分の各タイミング(ST1,ST2、ST3)の4点で【目的】急性冠症候群(ACS)である急性心筋梗塞(AMI),不安定狭心症(U-AP)の臨床診断に生化学的心筋マーカーの上昇の有無は必須である.しかし,発症早期では上昇していないこともあり,早期再灌流の重要性から虚血症状と心電図所見を中心に診断,治療を進めていくことが多い.今回我々は,虚血症状を発症し当院に救急搬送され,冠動脈造影を施行した症例の搬送直後に記録した心電図の判読所見,生化学的心筋マーカー(H-FABP),発症からの経過時間,冠動脈狭窄率について比較検討を行ったので報告する.【対象および方法】2017年9月~2018年4月までの緊急冠動脈造影を施行した60例(男性45例,女性15例,年齢39~95歳,平均71歳)の搬送直後の心電図のST-T変化,H-FABP,虚血症状発症からの経過時間,冠動脈狭窄率を比較検討した.【結果】心電図所見は,ST上昇58%,T波増高5%,ST下降・陰性T波7%,軽度ST下降・平低T波(以下STdep/flatT)25%,脚ブロック3%,正常2%であった.ACSと診断されたのは93%,うちAMIは70%であった.◎今野 雅美1)、佐野 裕子1)、中井 景子1)、古川 奈津樹1)、峯岸 将臣1)、松嶋 祐未1)、清水 則明1)、高山 好弘2)◎今野 雅美1)、佐野 裕子1)、中井 景子1)、古川 奈津樹1)、峯岸 将臣1)、松嶋 祐未1)、清水 則明1)、高山 好弘2)戸田中央医科グループ 新座志木中央総合病院1)、TMG本部 臨床検査部2)戸田中央医科グループ 新座志木中央総合病院1)、TMG本部 臨床検査部2)◎山田 貴士1)、関口 知詠子1)、佐野 恵1)、日下部 駿人1)、若松 智子1)、猪浦 一人1)◎山田 貴士1)、関口 知詠子1)、佐野 恵1)、日下部 駿人1)、若松 智子1)、猪浦 一人1)埼玉県済生会栗橋病院1)埼玉県済生会栗橋病院1)連絡先:0480-52-3611(内線1813)EntryNo. 41EntryNo. 42貧血症例での安静時心電図変化の検討当院における虚血症状を発症した心電図の当院における虚血症状を発症した心電図のST-T変化についての比較検討ST-T変化についての比較検討生-1(第5会場 9:30~9:57)生-2(第5会場 9:30~9:57)

元のページ  ../index.html#78

このブックを見る