《研修内容の概要・感想など》
今回は「薬剤感受性検査と薬剤耐性菌検出について」をテーマで研修会が開催された。
薬剤感受性検査の目的は、正しい診断と起炎菌同定に基づき治療方針を決定するため、感性の薬剤を把握し感染症治療に有効な抗菌薬を選択するための検査である。薬剤感受性検査には、寒天平板希釈法、微量液体希釈法、ディスク拡散法、E-test(濃度勾配法)があり各法の利点と欠点が解説された。国内の状況として、2024年日臨技サーベイにおける薬剤感受性検査参加施設の約98%が微量液体希釈法で実施されていることが紹介された。薬剤感受性検査実施手技のポイントや結果の読み方について解説され、直ちに日常検査に活かすことができる内容であった。測定した薬剤感受性結果よりde-escalationを含めた抗菌薬適正使用に繋げるためには、抗菌薬適正使用支援チーム(AST)による介入が重要であり他職種連携の必要性を実感した。
薬剤耐性菌検出についてでは、カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌(CPE)の検出を中心に講演された。不適切な抗微生物薬の使用により、抗微生物薬に耐性や抵抗性を獲得することを「薬剤耐性(AMR:Antimicrobial Resistance)」といい、このまま何も対策をとらなければ2050年には全世界でAMR関連の死亡者数が1000万人になると予測され耐性菌検出の重要性は増している。薬剤感受性検査結果より耐性機構を推測し検査を進めることで耐性菌の見落としを減らすことに繋がる。耐性菌検査には遺伝子検査と表現型検査がある。遺伝子検査による耐性遺伝子の検出は迅速性と精度の面で優れているが、PCRの設備が必要である上、使用するプライマーによっては検出できない遺伝子型も存在する。表現型検査では、modified carbapenem inactivation method(mCIM)によりカルバペネマーゼを検出し、阻害剤などを用い遺伝子型を鑑別するため時間が掛かることや遺伝子検査に比べ感度は劣るが、特別な設備を必要としないなど利点と欠点が解説された。CPEはカルバペネマーゼ遺伝子をプラスミド上に保有するため菌種を超えて伝播する可能性があるため感染対策は感染対策チーム(ICT)、感染症治療はASTとの連携が必要となる。
今回の研修会で得た知識は、正確な薬剤感受性結果を報告するために重要である。新人技師には基礎を学べる良い機会であったとともに、ベテラン技師にとっても知識の再確認ができる内容の講演であった。今後の日常検査に活用していただければ幸いである。
文責:酒井利育
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