平成25年度関甲信支部指定講習会感染症研修会レポート

        


     日 時 : 平成25年11月23日(土
     会 場 : 獨協医科大学越谷病院 高架下会議室
     演 題 :講演1『標準予防策とPPEの装着(実習)』
        講師:千葉礼子(埼玉県済生会川口総合病院)
      
講演2『院内感染対策における検査技師の役割』
           講師:飯草正実(獨協医科大学越谷病院)
          講演3『耐性菌の現状と感染症法の改正について
          
JANIS還元データの利用方法も含めて〜』
        
講師:鈴木里和(国立感染症研究所)
          講演4『感染防止対策および地域連携における役割と効果』
           講師:長沢光章(東北大学病院)
       講演5『インフルエンザ検査における
           正しい検体採取とアウトブレイクの対応』

           講師:光武耕太郎(埼玉医科大学国際医療センター)

     

    実務委員:永野栄子、古畑健司、渡辺典之、荻野毅史、金田光稔、
           砂押克彦、小西光政、佐藤香里、牧 俊一、酒井利育
 

《研修内容の概要・感想など》
 「標準予防策と個人防護具の装着」と題して、済生会川口病院感染管理師長の千葉礼子氏に講演して頂いた。
 全ての患者様に適応される標準予防策を基本にし状況に応じ、接触感染予防策、飛沫感染予防策、空気感染予防策を追加して行うこと等を講演して頂いた。
 個人防護具は、医療従事者自身を守るだけではなく、医療従事者を介し他の患者様や環境への伝播を防ぐことで患者様を守ること等を講演して頂いた。マスク、ビニールエプロン、手袋を用いて着脱実習も行って頂いた。
個人防護具を適切に選択し、正しく着脱しないと効果が得られないことを改めて実感した。今回学んだことを実践していきたいと思う。 「院内感染対策における臨床検査技師の役割」と題して、獨協医科大学越谷病院感染制御部の飯草正実氏に講演して頂いた。
 獨協医科大学越谷病院のアウトブレイクを疑う基準、報告体制、接触感染対策時の対応について講演して頂き、自施設に即したマニュアル作成と周知徹底が重要であることを教えて頂いた。手指衛生教育では、パームスタンプを用い視覚的に手洗いの重要性を訴えるなど、職員に興味を持ってもらえるよう工夫されていた。POT法でMRSA疫学的解析が行われていること、数値化できるため他施設や過去の菌株との比較、管理が容易であること、POT値の比較で院内伝播の把握を行うことが出来ることが講演された。アンチバイオグラムは抗菌薬の適正使用、経験的治療の補助となり、その作成は臨床検査技師の重要な仕事であることを改めて実感した。ICT NEWで感染症情報の提供、ICT活動の報告、基礎的な知識の啓蒙を行っていることが紹介された。
 微生物検査の特殊性を活かした感染対策を行い、得られた情報を迅速に関連部署へ周知し、各部署との連携を取りながら活動することの大切さを学んだ。自施設の現状を踏まえ今回学んだことを取り入れながら感染対策に取り組んでいきたい。
 「耐性菌の現状と感染症法の改正について〜JANIS還元データの利用方法も含めて〜」と題して、国立感染症研究所の鈴木里和氏に講演して頂いた。
 現在、厚生労働省が感染症発生動向調査で報告を求めている薬剤耐性菌感染症には、5類基幹定点として、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、薬剤耐性緑膿菌(MDRP)、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)、薬剤耐性アシネトバクター(MDRA)、5類全数として、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)があること、厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)事業検査部門で集計している薬剤耐性菌には、カルバペネム耐性緑膿菌、カルバペネム耐性セラチア、第三世代セファロスポリン耐性大腸菌、第三世代セファロスポリン耐性肺炎桿菌、フルオロキノロン耐性大腸菌などがあることを紹介された。また、今年度の届け出基準の変更事項や、新たな薬剤耐性菌が危惧されるなか、ここ10年間、新薬が出ていない抗菌薬の開発状況や、日本・諸外国における分離状況なども紹介された。JANISからの還元情報を有効に活用し、自施設の概況を把握、耐性菌の発生動向にも注意していきたい。 「感染防止対策および地域連携における役割と効果」と題して、東北大学病院診療技術部の長沢光章氏に講演して頂いた。
 現在、感染制御地域ネットワークは国内15以上の地区にあり、講演会の企画・立案からアウトブレイク対応、施設ラウンド、教育資材の作成・提供、相談窓口の設置、研修会の実施、ガイドラインの作成、各種サーベイランスなど多岐にわたる活動を紹介された。
 また、平成24年度診療報酬改定によって得られた収益の使用例として、手袋などのPPE、ワクチン費用、感染対策に必要な検査、疫学調査、手指消毒薬、予防投薬、感染対策を行う人件費などを挙げられた。東北地域感染制御ネットワークの実例として『情報の共有化』『協力・連携』『支援』『感染症クライシスマネージメント人材育成プログラム(TCMID:タクミド)』など、行政(県医療整備課)との連携も交えて活動状況を紹介された。
 日頃から感染対策に関する情報の共有、連携、支援には医療施設や行政を含めた社会全体で取り組むことが重要で、現在ICDが約1万人に対しICMTは350名という現状から今後、臨床検査技師の役割を改めて考えることができた講演であった。
 「インフルエンザ検査における正しい検体採取とアウトブレイクの対応」と題して、埼玉医科大学国際医療センター感染症科・感染制御科の光武耕太郎氏に講演して頂いた。
 インフルエンザの特徴は、冬季の代表的なウイルス感染症であること、社会全体への影響が大きいこと、高齢や免疫不全等の患者は時に重篤となることなどを挙げられた。そして、ワクチン接種による防衛が重要であること、早期診断・治療が有効であることから、外来診療において迅速診断キットが非常に有効であると述べられた。スライドでは、日本の優れたインフルエンザ診療体制により、2009年インフルエンザ各国死亡率が人口10万人あたり、米国3.96人に対し日本は0.16人であったこと、早期診断によって抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)の早期処方が可能である反面、過剰処方ではとの一部指摘もあること、迅速キットにおいても検出感度が改良され、多くのメーカーでは鼻かみ液での検査が可能となり診断に貢献していることなどを紹介された。
 臨床検査技師の業務拡大を目的とした法改正・見直し案の中の一つに、「インフルエンザ検査のため鼻腔・咽頭からの検体採取」も挙げられているなど今後の動向にも注意しながら、チーム医療に貢献できるように取り組んでいきたい。
                                                文責:酒井利育、小西光政



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