生涯教育レポート 2

        

微生物検査研究班・公衆衛生検査研究班 合同研修

     日 時 : 平成25年6月1日  13時00分〜16時00分
     会 場 : 埼玉県衛生研究所  点数:専門教科−20点
     演 題 : 感染症に関する最近の話題と菌株供覧
          1.      寄生虫症とリケッチア感染症について
          2.      呼吸器系感染症について
          3.      腸管系感染症について
          4.      病原体等の輸送について
          5.      菌株供覧
     講 師 : 山本徳栄、嶋田直美、倉園貴至、青木敦子( 埼玉県衛生研究所 )
           児玉加奈子 ((株)ビー・エム・エル総合研究所)  
         共 催 :埼玉県衛生研究所    
     参加人数 :45名
     出席した研究班班員:《微生物検査研究班》
                  永野栄子、荻野毅史、古畑健司、小西光政、砂押克彦、佐藤香里、
                  牧 俊一、酒井利育
                  《公衆衛生検査研究班》
                  菊地孝司、阿保一茂、榊原外江、富井貴之、鈴木 勤
                  

《研修内容の概要・感想など》
 今年度は、4つのトピックスと菌株供覧の実習を行った。
1)寄生虫・リケッチア症分野では、山本氏が、トキソプラズマ症について講演した。とくに埼玉県内のネコにおけるToxoplasma gondiiの保有状況の研究成果について、遺伝子解析結果も交え、解説された。また「感染症法と保険診療」について、感染症法での届け出義務の疾患に対し、検査法と治療薬が保険適用されていない問題点と、近年これらの訴えにより、日本紅斑熱、つつが虫病、Q熱、ライム病、野兎病などの治療薬が保険適用になったことが報告された。
2)呼吸器系感染症分野では、嶋田氏が、Corynebacterium ulcerans感染症について、解説された。 ジフテリアと類縁菌であり、ジフテリアとほぼ同じ毒素を産生し、ジフテリア様疾患を起こすこと、国内の発生状況や埼玉での2事例について実際の検査結果の写真等を使い、解説された。
3)腸管感染症では、倉園氏より、2012年の腸管系三類感染症の検出状況について説明があった。赤痢菌は9株検出され、腸管出血性大腸菌では、検出菌株の菌型やPFGEパターンを示しての解説があった。 
4)病原体等の輸送については、昨年に引き続き、青木担当部長から病原体輸送に際しての感染性物質の分類や輸送容器や包装方法、ゆうパックでの送付続き等について、具体的にかつ詳細に説明いただいた。
5)菌株供覧は、昨年より担当していただいている児玉技師が中心になって指導をしてくださった。臨床での現場で検出される細菌について、培地でのコロニー形状、確認培地での生化学的性状について、熱心に解説していただいた。コレラ、赤痢、チフス、腸管出血性大腸菌、レジオネラ、マイコプラズマ、非結核性抗酸菌をはじめ、Aeromonas、Ureaplasma 等、臨床分離菌も供覧に提供された。
また今回は、直接検体を塗布した培地と純培養平板とが提供され、より実地に近い状態での観察ができた。顕微鏡を用いてのコロニー観察、寄生虫標本の観察もあり、毎回、1時間30分の供覧時間が瞬く間に過ぎるほどの盛りだくさんの内容であった。
 約30年近く継続開催してきたこの研修会だが、来年の衛生研究所移転に伴い、現在の庁舎での開催は最後になった。この研修は、単に通常見る機会のない病原体を実際に観察するというだけでなく、参加機関(医療機関、検査機関)と衛生研究所、臨床検査技師会の交流の場でもある。担当者同士が直接話をし、理解を深めることに非常に大きな貢献をしてきたと考えている。これらは、感染症発生動向調査などでも、病原体収集が非常にスムーズに進み、検査技師会、各機関、衛生研究所がこれほど密接に連携しているケースとして、全国でも高い評価を得ている。これも先輩方の努力により、長く継続してきたことが大きな力になっている証である。
 今後とも継続開催してほしいとの要望も多く、場所等の問題はあるにせよ、継続していくことの重要性を実感している。      

                                    平成25年6月 7日    文責: 砂押 克彦


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