生涯教育レポート 4

                 

    微生物検査研究班・公衆衛生検査研究班  合同研修
                     埼玉県衛生研究所 共催


     日 時 : 平成 261025   1250分〜1530

     会 場 : 埼玉県衛生研究所             点数:専門教科−20点

     主 題 :新しい衛生研究所で学ぶ感染症に関する最近の話題と菌株供覧
       1.腸管系感染症について
       2.呼吸器系感染症について
       3.寄生虫症とリケッチア感染症について
       4.菌株供覧

          
      講師 :倉園貴至、嶋田直美、山本徳栄 ( 埼玉県衛生研究所 )
          古畑健司((株)ビー・エム・エル総合研究所)  
      共催: 埼玉県衛生研究所  


   参加人数 :38名
     出席した研究班班員:永野栄子、古畑 健司、砂押克彦、荻野毅史、佐藤 香里、酒井利育、牧 俊一 (微生物検査研究班)
                 :菊地孝司、長崎広美、阿保一茂、富井貴之、穴原賢治(公衆衛生検査研究班)

    《研修内容の概要・感想など》
 本年4月に移転した新しい埼玉県衛生研究所での、初めての研修会であった。
 交通アクセスが良くないため、例年より10分繰り上げ、終了時間厳守の進行であった。
 今年度は、3つのトピックスと菌株供覧の実習を行った。
1)腸管系感染症では、倉園氏が、2013年の検出状況について説明された。なかでも、チフスは、従来の海外感染ではなく、国内感染事例が増加していることを報告され、感染源や原因を含め、関心が高かった。
2) 呼吸器感染症では、嶋田氏が結核、溶レン菌感染症、レジオネラ、ジフテリア、百日咳、VRE感染症について2014年の1月から9月末までの最新の検出状況を解説された。
とくにジフテリア、VRE感染症については、その届出基準の詳細や解析例についての成績を示された。溶レン菌については、今年は例年よりも定点あたりの報告数が多いこと、咽頭炎由来のT型別では、B3264が増加傾向にあることを説明された。
3)寄生虫・リケッチア症分野では、山本氏は、食品媒介によるトキソカラ症とつつが虫および日本紅斑熱について講演してくださった。トキソカラ症では、イヌ回虫、ネコ回虫の解説、ヒトへの感染様式や臨床例の詳細などについて、解説いただいた。
4)菌株供覧は、古畑技師が中心になって指導・解説を行った。
臨床で検出される細菌について、直接検体を塗布した培地と菌株の純培養平板とが提供され、培地でのコロニー形状、確認培地での生化学的性状、培養検体からの見分け方などが示された。
また、今回は特に薬剤耐性菌についての解説があり、メタローβーラクタマーゼ産生菌やカルバペネム耐性腸内細菌について、その判定の方法など、実際の培地をもとに解説された。
 衛研側からは、例年どおりコレラ、赤痢、チフス、腸管出血性大腸菌、レジオネラなどの供覧、寄生虫標本の観察などがあり、受講者は熱心に観察を行っていた。なかでもレジオネラのコロニー観察 (斜光法)は、医療機関ではなかなか目にしない検査法であり、関心を集めていた。
 今年は、衛生研究所移転に伴い、吉見町での新しい庁舎での初めての開催になった。この研修は、単に通常見る機会のない病原体を実際に観察するというだけでなく、参加機関(医療機関、検査機関)と衛生研究所、臨床検査技師会が相互に直接話をし、理解を深めること、「顔の見える関係」つくりを目指してきた。これは、感染症発生動向調査における病原体収集の成果や、検査技師会・各機関・衛生研究所が密接に連携しているケースとして、全国でも高い評価を得ている。他県でも同様な研修を企画していると聞いている。病原体の管理面や実習場所など、さまざまな問題があるが、新たな研修方法も考えながら、継続していくことが重要と考えている。 

                               平成26年10月31日

                                 文責: 砂押 克彦 


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