生涯教育レポート 3

                   

微生物検査研究班・公衆衛生検査研究班 合同研修

  日時 : 平成23年 6月11日(土)  13時00分 〜 16時00分
     会場  埼玉県衛生研究所       点数 : 専門教科− 20点
     主題 : 感染症に関する最近の話題と菌株供覧
       1.腸管系感染症について
       2.呼吸器系感染症について
       3.寄生虫症とリケッチア感染症について
       4.菌株供覧
     講師 : 倉園貴至、嶋田直美、山本徳栄、(埼玉県衛生研究所)
      古畑 健司 ((株)ビー・エム・エル総合研究所)
     共催   埼玉県衛生研究所        参加人数 : 36名
  出席した研究班班員 :
   荻野毅史、古畑健司、渡辺典之、小西光政、砂押克彦、牧 俊一、佐藤香里(微生物検査研究班)
   阿保一茂、菊地孝司、長崎広美、武藤由里子、榊原外江、穴原賢治、富井貴之(公衆衛生検査研究班)

《研修内容の概要・感想など》

 今年度も、感染症に関する最近の話題(3題)と菌株供覧の実習を行った。

 1)最初に倉園氏が、2010年の腸管系三類感染症の検出状況と重要な発生事例について、さらに今年度になって起きた大規模な富山・福井の焼き肉店事例とドイツを中心とする欧州のO104事例について、最新の状況について解説された。従来のO157、O26、O111だけでなく、様々な血清型による事例が発生してきていることを報告された。

 2)呼吸器系感染症分野では、嶋田氏より、最近発生し、死亡者1名を出した髄膜炎菌性髄膜炎事例を受けて、感染症発生動向調査における髄膜炎の種類から、髄膜炎菌性髄膜炎の発生状況、検査法について、詳細な説明があった。髄膜炎菌性髄膜炎は、1999年来、全国でも10例前後で、非常に希な発生数だが、今回のような死亡例もあり、適切な時期に抗菌薬治療が行われないと、死亡率が非常に高い疾患である。このため、しっかりと検査を行い、確実、迅速に検出することが重要であること。また、問題点として、髄膜炎のみの届け出しか統計に上がらないため、髄膜炎以外の疾患像の把握が不十分なことも指摘された。

 3)寄生虫・リケッチア症分野では、山本氏が、今回話題となっているアジア条虫について、多くの事例を交え解説された。従来、日本では存在しない条虫が報告され始めた事について、発生予防などの対策確立が急務であることを訴えられた。次いで、つつが虫病や日本紅斑熱の発生状況を解説された。つつが虫病では、埼玉県の報告数が、近隣都県に比べ、少ないことを問題点として挙げられた。

 4)菌株供覧は、場所を移動し、実習室で行った。古畑氏の詳細な解説・進行により、充実した実習指導が行われた。コレラ、赤痢、チフス、腸管出血性大腸菌、レジオネラ、リン菌、今回の髄膜炎菌などの感染症法上重要な細菌の菌株も衛研から提供され、さらに山本氏より寄生虫、原虫類の顕微鏡での観察実習も行われた。例年以上に熱心に観察する参加者が多く、予定時間を超過しての実習になった。この事業は、移動が困難で、実物になかなか触れることができない病原体について、直接観察できる貴重な機会であり、また検査技師会と衛研、実際の従事者同士が顔を合わせ、意見交換のできる重要な機会であることを実感した。

                                平成23年6月14日
                                文責: 砂押克彦 


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