2017年4月 Q&A

Q:塩類が析出して沈渣が見にくい時の対処法を教えて下さい。
A:無晶性の塩類(尿酸塩、リン酸塩)が多量に出現している場合は、尿沈渣鏡検の妨げになるため以下の方法で消去すると鏡検がし易くなります。
消去方法は、EDTA-3Kを0.4%の割合で生理食塩水に溶解させた調整液を尿沈渣に10mL加えてよく混和して再度遠心して沈渣を鏡検します。(尿酸塩の場合は生理食塩水のみでも消去が可能です。) (小関)


Q:尿沈渣検査法2010(2011年発行)に変わるテキストはありますか?
A:尿沈渣検査法2010の改訂版の発行は予定がありません。しかし、後継書的なものとして医学検査「尿沈渣特集 特集号」が平成29年5月下旬に発刊が予定されています。本来は平成29年4月に発刊予定でしたが修正などがあり、現在、発行が延期されています。日臨技のホームページ等をこまめにご確認ください。 (小関)


Q:認定一般検査技師の認定試験は合格率が低いと聞きますが、どのような試験勉強をすればいいのでしょうか?
A:日臨技認定センターの発表では平成28年度認定試験合格率は27.3%でした。
(合格者35 名/受験者127名)
 試験内容は認定一般検査技師精度カリキュラム(日臨技認定センター専用ページ)を参照ください。≪参考≫共通書籍を参照して勉強しましょう。特に一般検査技術教本は細かい文章まで覚えるようにしましょう。腎尿路系の解剖~腎機能まで細かく覚えましょう。尿沈渣に関しては尿沈渣検査法2010を文章、写真すべて覚えましょう。髄液検査についても髄液検査技術教本を細かい文章まで覚えるようにしましょう。便検査は便ヘモグロビン、寄生虫も含めて勉強してください。寄生虫もかなりの問題数を占めています(寄生虫は駆除薬まで、ダニの種類も覚えましょう)。穿刺液検査については、ポケットマニュアル穿刺液細胞を参照してください。腎・泌尿器疾患に関する内容は病期が見えるシリーズの腎・泌尿器を参考にして勉強しましょう。(小関)
  ※注意:平成29年3月31日に一般検査技術教本は新しく後継書が発刊されました。また、尿沈渣検査法2010についても、後継書として医学検査「尿沈渣特集 特集号」が5月下旬に発刊が予定されています。よって、平成29年度の認定試験を受験する方は今後の認定一般検査技師精度カリキュラムの≪参考≫共通書の更新があるか必ず確認してください。 (小関)


Q:混濁の強い尿の比重は、遠心後に測定した値の方が正しいと解釈して大丈夫でしょうか?比重は遠心すると値が変わると聞いたことがあるのですが。
A:混濁が強い尿を屈折計で測定した場合、比重を表す境目がぼやけてしまい、正確な比重が出ません。結果にエラーコメントが付いている時には、遠心をした上清で再度測定を行ってください。同じ方法で測定した場合、遠心前と遠心後で違いが出ることがあると思いますが、その際には遠心後の結果を採用してください。 (槙島)


Q:尿生化学の検査に関して。教科書的には、よほど混濁していない限りそのまま測定できるとなっていますが、データ的には上清で行うのとそのまま測定を行うのとではどちらがいいのでしょうか?
A:遠心を行うことで蛋白など、結果に影響が出る項目があります。どちらの結果が良いのかは臨床と相談して頂くのが望ましいと思います。但し、血清と違い尿中には多数の有形成分が存在しているため、生化学の分析器で測定を行う場合は注意が必要です。(槙島)


Q:講演の中で「臨床医の求めているものを把握する」という話がありましたが、どのような取り組みをしていますか。
A:当ラボでは、いつもと違うオーダーやコメントなどが入ってきたときに直接臨床に確認をする。(槙島)


Q:尿量が少ない場合、自動分析機に比べて鏡検法は実際の値よりも低くなるとありますが、UFなどの機器データだけを報告(提出)するのでは駄目ですか。どのみち参考値ならば、機器のデータでもよいのではないですか。
A:機器のデータ報告でも良いと考えますが、検体の特性(混濁の程度や依頼科など)も考慮して機器で測定するか判断するのも1つの方法です。施設毎の鏡検基準で良いと思います。 (柿沼)


Q:沈渣量が多すぎて、カバーガラス内で均一に標本作製が出来ない時、どうすれば良いか
A:そのようなケースは大抵、沈渣量が0.2mlを超えてしまっているケースが多いと思うので、その時点で参考値と考えます。参考値として可能な範囲で報告するか、希釈してできる限り均一化し報告する方法もある(?)と思います。 (柿沼)


Q:昔(約20年前)は無染色での沈渣トレーニングを先ず行い、染色像は最後に見ました。
 今でも教育方法として正しいと思いますか。
A:基本は無染色、必要に応じて染色の形は正しいと考えます。施設によっては基本的にして鏡検する場合もありますが、施設毎の教育マニュアルで良いと思います。(柿沼)


Q:資料では尿量4mlまで視野内差に変化がないように見えますが、スライドに載せる量または濃縮時に0.1mlにするなどの手法は行っていますか。
A:比較実験した際は、尿量の違いのみで沈渣量は0.2ml、作製手順も統一して行いました。
 検体が5mlの時には沈渣量を0.1mlとする方法は、より正確な結果が得られると考えます。(柿沼)


Q:尿量が少ない時、尿沈渣の量を減らして対処する方法は駄目ですか。
A:尿量10mlに対し沈渣量0.2mlを基準とし、比例させて対処した方がより正確な結果が得られると考えます。ただし、尿量の付記は必要です。(柿沼)


Q:顕微鏡的膿尿が白血球5個/HPFなら、通常の膿尿の定義がありますか。
A:膿尿の定義=顕微鏡的膿尿とお考えください。尿中の白血球が増え、尿の外観が白く濁っている状態を肉眼的膿尿といいます。ちなみに血尿の定義も同様で、赤血球5個/HPF以上を血尿(顕微鏡的血尿)と呼び、赤血球が多く、尿の外観が赤い状態を肉学的血尿といいます。(深田)


Q:尿路上皮の各層の細胞における臨床的意義はあるのか。もしあるとしたら分類して報告すべきなのか。
A:尿路上皮の表層~深層という分類は尿沈渣検査に携わる技師として知っていてほしい知識であると自分は思います。その他の上皮細胞類の分類についても同様です。しかし、それを結果として臨床に報告する必要があるかと考えた場合、そこまでの臨床的意義はないと思います。上皮細胞類の場合、数と細胞集塊の有無等を報告すればよいと思います。(深田)


Q:細胞がS染色でも染まらない集塊の鑑別方法はありますか?
A:S染色に染まっても染まらなくても、集塊の中心部分は見づらいので、端の部分の細胞で鑑別をするようにしてください。あと、細胞集塊だけで出現する事はなく周りの視野を見れば、単体で出現している細胞もあるのでそれと集塊の細胞を比較するように鑑別してください。円柱上皮細胞の場合、集塊を横から見た場合は柵状、上から見た場合にはシート状という特徴的な配列をするので、それぞれの集塊を探すのも鑑別ポイントになると思います。(深田)


Q:尿沈渣の非上皮細胞類、上皮細胞類の数の数え方を教えてほしいです。先輩との結果が合わず悩んでます。
A:400倍で20視野~30視野を鏡検することが望ましいが、最低10視野を鏡検しその平均を報告する。細胞集塊などが見られた場合には細胞集塊(+)と報告する。自施設でも検査の終わった尿沈渣の検体を新人さんに見てもらう事があるのですが、結果が合わない事は多いです。原因としては、
・時間の経過や何度も標本を作った事で尿沈渣成分が減ってしまっている。
・ルーチンでは診察前検査などの時間制約があり、一件辺りにかける鏡検時間が短いが、新人さんは時間をかけて詳細な鏡検をしているので、新人さんの数の方が正確な場合が有る。
・尿沈渣を見始めた頃の傾向として、最後に見た成分の印象が強く残ってしまい、報告するほどの数がなくても報告してしまう。なので、自施設では誤認や見落としが原因による数の違いでなければ、1ランク程度の結果のずれは問題とはしていません。(深田)


Q:動きのない球菌とリン酸塩(塩類)の鑑別
A:リン酸塩は酢酸、尿酸塩は生理食塩水でそれぞれ溶解させる事ができます。ちなみに自施設では両方の塩類を溶解することができる0.4%EDTA-2Na加生理食塩水を使用しています。(深田)


Q:酵母様真菌の数の取り方がよく分からない
A:細菌や真菌等の微生物類は記載法が定性表示なので、数を数えたりはしていません。尿沈渣検査法2010では以下のような表記になっています。

0から数視野に散在
1+ 各視野にみられる
2+ 多数あるいは集塊状に散在
3+ 無数

なので、自分は毎視野認められなければ(-)、
 数が少なくても毎視野認められれば(1+)、
 集塊でも散在していても視野の全体に認められれば(2+)、
 視野全体を埋め尽くしていれば(3+)と報告しています。(深田)


Q:コンタミの細菌と感染性の細菌の見分け方は?コンタミの細菌は報告しなくてよいか?
A:尿路感染症では多数の細菌と白血球を認める事が多く、採尿方法が不適切な場合のコンタミの細菌では背景に扁平上皮細胞を認める事が多い。その他に尿路変更術後や糞便混入等の尿では腸内細菌のコンタミが認められる事がある。尿路変更術後ならば背景に腸上皮(小型の細胞質内封入体細胞)、糞便混入ならば食物残渣がそれぞれ認められる。コンタミを強く疑うような場合でも、尿沈渣中に細菌が認められれば報告をします。(深田)


Q:異型細胞を良性、悪性関係なく報告しています(判別できる技師がいない)正しいですか?
A:尿沈渣検査における異型細胞の定義は「悪性細胞または悪性を疑う細胞」となっていますので、鏡検をした際にその可能性を否定できない細胞に遭遇した場合には積極的に報告をしてよいと思います。尿沈渣検査で異型細胞を報告する事で、尿細胞診等の次の検査に進める事が大事で、一般検査で異型細胞の確定診断をする必要はないと自分は考えます。ただし、全く分からなくてよいとは思いませんので、尿沈渣のアトラスを見る、講習会や実習等に積極的に参加するなどして、少しでも異型細胞が判別できるように努めていただければと思います。(深田)


Q:新人に対する尿沈渣教育はどのようにおこなっていますか?また、力量評価はおこなっていますか?
A:自施設では以下の順序で尿沈渣教育をおこなっています。
1. 基本的成分を覚えてもらうために尿沈渣のアトラスを見てもらう。
2. 結果を報告済みの検体を鏡検してもらい、報告されている成分を見つける事ができるかを確認する。
3. 結果を報告済みの検体を鏡検してもらい、自身が鏡検した結果と報告した結果が合っているかを確認する。
4. 至急扱いではない検体を鏡検してもらい、鏡検後に指導者が結果を確認する。
5. 1~4までで指導者が問題なしと判断したら、自信がないと感じる結果以外はそのまま報告をしてもらう。
埼玉県医師会サーベイや日臨技サーベイ等で尿沈渣のフォトサーベイがありますが、それらを尿沈渣検査に携わる技師全員に回答してもらい、力量評価というか目合わせをおこなっています。(深田)

2017年08月20日