不快な精神的ストレスにあふれている現代社会では、自律神経の不均衡あるいはリンパ球に依存する免疫力の低下などによって生じる種々の生活習慣病が引き起こされています。そのため、いかに自律神経の調和を回復させたり、生体外から侵入する病原体や体内で発生するがん細胞などの異物を撃退する免疫力を高めて人々の健康を生涯にわたり守っていくかが、「未病改善」あるいは「治未病」においてたいへん重要な課題になっています。
 音楽療法は音楽のもつ特性を有効に活用して人間のさまざまな病気を予防したり治療するセラピーの一つです。私が注目している音楽、例えばモーツアルトが作曲した名曲には、人間の意志とは無関係に作動する自律神経の中でも、身体をリラックス状態に導く副交感神経を刺激する音の特性が豊富に含まれていることが医学的な研究から判明しています。とくに、和音に満ちた高い周波数の音と小川のせせらぎのようなゆらぎ、そして倍音(音と音とがぶつかり合って、より高い周波数になった音)と呼ばれる音響学的な特性などが、不快な精神的ストレスや働き過ぎ、あるいは不安や悲しみなどで過度に作動する交感 神経のはたらきにブレーキをかけることがわかってきました。つまり、こうした音楽をうまく活用すると、心身をリラックスに導く副交感神経にスイッチが入り、細胞の分泌力が高まって体表粘膜のIgA抗体依存の生体防御力を増強させたり、ウイルスやがんを攻撃するリンパ球機能を高めることができます。
 一方、消化機能や血行の改善から新陳代謝が良くなるため、肌荒れや冷え性などの不定愁訴を伴う未病を予防したり改善することもできます。この意味で、安全かつ安価で副作用のない効果的な音楽療法は心と体、そして脳をリラックスさせ、種々の未病や病気を改善することができ、日々の生活の中で健康維持あるいは健康増進に役立つものと期待されます。加えて、歌を唄うという能動的な音楽療法も舌根筋から喉の咽頭蓋を司る筋肉などを鍛える結果、特に高齢者に多い誤嚥性肺炎の予防に役立つことがわかってきました。
 このように、現代社会人に多い未病の状態を効果的な音楽療法を取り入れることによって改善することができるために、今後、益々その活用法が注目されてくると期待されています。

講演要旨

音楽療法講演と
吹奏楽部演奏のコラボレーション♪

演奏 埼玉県立大宮高等学校 吹奏楽部

実績 西関東吹奏楽コンクール金賞受賞(2005年~2013年)
                      9年連続
   全日本吹奏楽コンクール銀賞受賞(2011年)
   全日本アンサンブルコンテスト金賞受賞(2010年)

講師 和合 治久(わごう はるひさ)
   埼玉医科大学 保健医療学部健康医療学科 理学博士

略歴 埼玉医科大学短期大学教授・学科長・学長補佐を経
   て、2006年より2014年3月まで埼玉医科大学教授・学科長

未病改善に役立つ音楽療法
~健康寿命の延長を目指して~

講演名 

公益社団法人 埼玉県臨床検査技師会

第43回埼玉県医学検査学会

学会長挨拶
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