活動報告

2023年度 活動報告

骨髄形態セミナー【実習】:2023年12月17日

生 涯 教 育 研 修 活 動 報 告 書

血液検査研究班

1 実施日時:2023年12月17日  10時00分~14時00分

2 会 場 :女子栄養大学 坂戸キャンパス  教科・点数:専門教科-20点

3 主 題 :骨髄形態セミナー【実習】

4 講 師 :血液検査研究班員

5 協 賛 :シスメックス株式会社

6 参加人数:会員 23名 賛助会員 3名 非会員 0名 学生 3名

7 出席した研究班班員:中山智史 網野育雄 堀口大介 堀内雄太 澁川絵美 島田崇史 吉澤悟 石田沙妃

8 研修内容の概要・感想など
 今回は血液検査研究班HPに掲載する方法で、島田氏の「骨髄画像問題と解説」および澁川氏の「骨髄検査の基礎」を事前学習として録音形式で講演を行なった。現地での実習では、5班に分かれて5症例を検査所見と骨髄標本の鏡検から疾患名を推測し、症例ごとの特徴的な血液細胞や疾患名、疾患鑑別に必要な追加検査などを発表形式で各班代表者に回答していただき、最後にそれらの症例の解説を堀口氏が行った。
 交流の少ない他施設の検査技師が話し合いを重ね、症例について検討し、疾患や追加検査を導き出す姿から骨髄検査を学ぶ検査技師の知識向上に貢献できる研修会であった。
以下に参加者の感想を掲載する。


さいたま赤十字病院
根岸 茉央
 就職して2年目となり、ルーチンとしてのマルク業務には慣れてきたものの、疾患への理解が追いついておらず、知識をより深めたいと思い参加しました。研修内容として標本を用いた実践的な症例問題を中心に行いました。標本の見方に加え、マルクを行うに至った経緯や採血のデータ、患者情報なども合わせて疾患を推測していく流れを体験できました。普段漠然と眺めているだけになってしまっていたルーチンでの標本も、今後はひとつひとつ順を追って評価し、より解像度の高い解釈に繋げていきたいと感じました。知識を深めるだけでなく、出会った症例へのアプローチ方法も学べた研修会でした。今後の業務、知識の向上に活かしていきたいと思います。ご指導いただきありがとうございました。

株式会社ビー・エム・エル総合研究所
山本 泰啓
 私は、今年の7月から骨髄検査に携わることになり基礎から学ぶ必要があった為、今回の骨髄形態セミナーに参加させていただきました。事前に配信された問題や資料では、骨髄検査の基礎的な知識や細胞の形態的特徴、症例の判読に至るまで詳しく学ぶことができました。セミナー当日は、会場で班ごとに分かれて5つの症例を鏡検し、ディスカッションしながら判読をしていきました。また、講師の方々の各症例についての判読のポイントや解説のお話はとても分かりやすかったです。今回のセミナーで得た知識を今後の鏡検業務に活かしていきたいと思います。ご指導ありがとうございました。



提出日:2023年12月24日
文責:吉澤悟

初心者・初級者 末梢血形態セミナー:2023年11月19日

生 涯 教 育 研 修 活 動 報 告 書

血液検査研究班

1 実施日時:2023年11月19日    11時00分~16時00分

2 会 場 :埼玉医科大学保健医療学部    教科・点数:専門教科-20点

3 主 題 :初心者・初級者 末梢血形態セミナー

4 講 師 :血液検査研究班

5 協 賛 :シスメックス株式会社

6 参加人数:会員 19名 賛助会員 3名 非会員 0名

7 出席した研究班班員:中山智史 堀口大介 澁川絵美 加藤鉄平 吉澤悟 

8 研修内容の概要・感想など
 前半は中山氏より血液形態学の基礎的な講演が行われ、後半は実習室にて鏡検実習が行われた。小テストで班分けをし、3~4名のグループに1つモニターを置き、講師が実際に見ている目的の細胞を映し出し、それを参考に鏡検を行った。基本的な細胞から病的な細胞まで形態学的特徴を学ぶことができ、基礎から実践まで学べる研修会であった。以下に参加者の感想を掲載する。


深谷赤十字病院
川和田 望
 私は、今年度から臨床検査技師として働き始め、血液検査に配属となったため基礎から学ぶことが出来る本研修会に参加させていただきました。前半には血液像の見方・考え方についての講義を受け、標本観察の流れや結果の読み方、各血球の臨床的意義を学びました。後半には各種症例の標本を用いて鏡検を行いました。標本一つ一つに解説があり、不明な点は講師の方々に教えていただきました。その他にも業務上で疑問に感じた事に答えていただけ、とても有意義な研修を受けることが出来ました。今回の研修会で得た知識を業務に活かし、鏡検が行えるようにしていきたいです。

行田中央総合病院
吉川 安津子
 この度は、研修会を開催して頂き有難うございます。病院勤務になり経験未熟な血液像を見ることがあり、細胞の鑑別を学ぶ機会を待っていました。前半の講義は、基礎的な検体の観察や鏡検のポイントを解りやすく説明して頂きました。後半は鏡検実習で様々な細胞を探し、自分で迷っていた部分もすぐに講師の方に質問が出来、理解が深まりました。今後は今回の経験を業務に活かし経験を積んでいきたいと思います。ご指導有難う御座いました。



提出日:2023年11月19日
文責:加藤鉄平

フローサイトメトリー検査と悪性リンパ腫:2023年10月27日

生 涯 教 育 研 修 活 動 報 告 書

血液検査研究班

1 実施日時:2023年10月27日    19時00分~20時30分

2 会 場 :浦和コミュニティセンター 第13集会室  教科・点数:専門教科-20点

3 主 題 :フローサイトメトリー検査と悪性リンパ腫
       講演1:FCM検査の基礎と悪性リンパ腫の解析
       講演2:悪性リンパ腫について

4 講 師 :講演1:髙橋 雅美(株式会社エスアールエル)
       講演2:堀口 大介(獨協医科大学埼玉医療センター)

5 協 賛 :なし

6 参加人数:会員 36名 賛助会員 4名 非会員 0名

7 出席した研究班班員:中山智史 網野育雄 堀口大介 堀内雄太 澁川絵美 加藤鉄平 島田崇史 吉澤悟 石田沙妃

8 研修内容の概要・感想など
講演1ではFCM法の基礎としての測定原理から実際の疾患を用いた症例解析についてまでの話があった。フローサイトメトリーとは、細胞などを浮遊状態にして流体系の中を高速で移動させ、途中に設置された検出部を通して得られる光学的あるいは電気的信号により、各細胞などの物理学的・生物学的特徴を研究・解明していく分野である。蛍光色素を付与したCD抗体を用いることで、細胞の大きさ、細胞の内容構造だけでなく疾患に特異的な細胞の出現を特定することができる。主にBリンパ球と反応する抗体としてCD19やCD20、CD79aなどあり、Tリンパ球ではCD2、CD3、CD5、CD7、骨随系細胞と反応するものとしてCD13、CD33やCD14、CD61などが用いられる。これらの抗体を解析パネルとして複合的に使用し、疾患に特異的な反応強度を得ることによって疾患特定の一助にすることができる。造血器悪性腫瘍解析におけるFCMの利点として、目的に合ったパネルを容易に作成できること、結果が出るまでに時間がかからず迅速な対応が可能であること、測定した結果は電子データとして半永久的に保存が可能であることが挙げられる。多くの施設ではフローサイトメトリーに関しては外注検査となっているが、使用されているCD抗体がどの疾患に特異的に反応するのか、解析された結果がどのような診断結果に結びつくのかを理解しながら検査に臨むことが重要であると感じる講演であった。
講演2ではリンパ系腫瘍の基礎的な知識から疾患による細胞形態の違いなどの話があった。リンパ系腫瘍は造血器腫瘍の中でB細胞、T細胞、NK細胞に生じた遺伝子異常によって腫瘍増殖をきたし、白血病や悪性リンパ腫などの様々な病態をとる疾患であり、その中でも悪性リンパ腫はHodgkinリンパ腫と非Hodgkinリンパ腫に分けられる。Hodgkinリンパ腫はHodgkin細胞やReed-Sternberg細胞という特徴的なB細胞由来の細胞が出現することから、他のリンパ腫と区別されており、頸部リンパ節や縦隔に好発し、全悪性リンパ腫の5%程度に認められる。比較的予後は良好で、5年生存率は70~80%以上と高率である。非Hodgkinリンパ腫はB細胞腫瘍、T/NK細胞腫瘍に分類される。また生存曲線の違いにより、病態が激しく進行するAggressive lymphomaと緩やかに進むIndolent lymphomaに分けられる。Aggressive lymphomaとしてマントル細胞リンパ腫やびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、Burkittリンパ腫などが挙げられ、Indolent lymphomaとしてMALTリンパ腫や濾胞性リンパ腫、セザリー症候群などが挙げられる。疾患によっては特徴的な細胞が出現するものもあるため、患者の臨床症状や末梢血液像、骨髄像、FCM結果、遺伝子・染色体結果など得られる情報を総合的に判断して臨床に報告する必要がある。普段、自施設で症例が集まらず症例に多く触れる機会がない場合もあるが、このような研修会を利用し、学ぶ機会を増やしていくことが大切であると感じた講演であった。

提出日:2023年11月6日
文責:加藤鉄平

血液検査の専門資格取得を目指して:2023年9月13日

生 涯 教 育 研 修 活 動 報 告 書

血液検査研究班

1 実施日時:2023年9月13日    19時00分~20時30分

2 会 場 :Web開催  教科・点数:専門教科-20点

3 主 題 :血液検査の専門資格取得を目指して
       講演1:血液担当者必見!!二級・認定試験を取得するためには
       講演2:認定骨髄検査技師取得に向けて

4 講 師 :講演1:石田 沙妃(学校法人明星学園 国際医療専門学校)
       講演2:圓田 和人(株式会社TLC 戸田中央臨床検査研究所)

5 協 賛 :なし

6 参加人数:会員 159名 賛助会員 0名 非会員 0名

7 出席した研究班班員:中山智史、堀口大介、堀内雄太、澁川絵美、加藤鉄平、島田崇史、吉澤悟、石田沙妃

8 研修内容の概要・感想など
講演1では二級血液検査士試験と認定血液検査技師試験についての試験の概要から対策について話があった。二級血液検査士試験は日本臨床検査同学院が発行する資格で、血液部門以外にも生化学や免疫学、病理学等もある。血液部門の試験内容は、基本的に5択40問の筆記試験、使用試薬や器具、検査方法について問う記述試験、写真から細胞や疾患から判読する形態試験、塗抹標本染色や凝固検査を用手法で行う実技試験が行われる。認定血液検査技師の資格は、経験年数や日本検査血液学会に入会してから2年以上経過している必要がある等の受験資格に規定がある。試験内容は、写真から細胞所見や検討すべき追加検査、考えられる疾患を答える症例解析試験、フォトサーベイの様に細胞を判定していく細胞識別試験、細かい専門知識が問われる選択式の筆記試験が行われる。このような詳細な試験概要と勉強の仕方など体験談を交えながら講演が行われた。
講演2では、認定骨髄検査技師資格についての話を聞くことができた。骨髄検査技師資格は、受験するにあたり認定血液検査技師を取得して一度、更新している必要があり、願書提出の際には骨髄検査所見報告書を20症例提出する必要がある。試験内容は50問の筆記試験、認定血液検査技師試験と同様に細胞の判定を行う細胞識別試験とバーチャル画像を用いたカウントや症例解析を行うバーチャル画像試験の二種類の実技試験が行われる。これらの試験概要を実際の症例を用いて報告書の書き方や考え方を踏まえて講演が行われた。
2つの講演では成功談や失敗談を含めた体験談も聞くことができ、今年度に受験を控えている人だけでなく、これから資格取得を考えている人にもモチベーションアップにつながる内容であった。

提出日:2023年9月25日
文責:加藤鉄平

凝固検査をわかりやすく!:2023年8月29日

生 涯 教 育 研 修 活 動 報 告 書

血液検査研究班

1 実施日時:2023年8月29日    19時00分~20時30分

2 会 場 :Web開催  教科・点数:専門教科-20点

3 主 題 :凝固検査をわかりやすく!
       講演1:凝固検査の基礎から遭遇する可能性のある異常値まで
       講演2:これだけは知っておきたい!凝固検査

4 講 師 :講演1:須長 宏行(積水メディカル株式会社)
       講演2:久保山 健治(久留米大学病院 臨床検査部)

5 協 賛 :なし

6 参加人数:会員 220名 賛助会員 5名 非会員 0名

7 出席した研究班班員:中山智史、堀口大介、堀内雄太、澁川絵美、加藤鉄平、島田崇史、吉澤悟、石田沙妃

8 研修内容の概要・感想など
 今回の講演は、凝固検査の基礎から臨床の現場で遭遇する異常値についてと幅広く網羅する内容であった。凝固検査では得られた異常値が検体の性状によるものか、装置・試薬および治療による影響なのかを判断しながら臨床に報告する必要がある。そのため、採血から検査値報告までの過程にどのような影響を及ぼす要因があるのか、その要因がどの程度データに影響を与えるのかを理解しておかなければならない。採血では、手技や混和不良による検体凝集が多くみられ、再採血に繋がってしまう例が多い。採血者への適切な手技を周知し、測定前にはしっかりと検体の性状を確認することが重要である。検体によっては目視ではフィブリン析出がわからないこともあるため、スポイト等で確認したり、血算データなどで推測したりすることも大切である。フィブリン析出による影響が疑われた場合は、基本的には取り直しを行い、困難であれば検査中止とするのが望ましい。現場によっては参考値でと言われることもあるかもしれないが、フィブリン析出した検体を用いた凝固検査は参考値としても不適であるため対応には注意すべきである。凝固検査測定試薬は、装置間差、試薬間差、同試薬でもロット間差が認められており、自施設で使用している装置・試薬の特性を知っておく必要がある。例えばAPTTでは検量線がないため、試薬ごと、ロットごとにデータに差異が生じる。また、ヘパリンやループスアンチコアグラント、凝固因子に対する感受性が試薬ごとに違うため、その点も理解し考慮しなくてはならない。また、治療や患者の病態も検査値に影響を及ぼす要因であり、心臓カテーテル検査後などでは検査時に使用した抗凝固薬が検査値に影響を与えるが、前述したように試薬によって影響度も変化する。敗血症によるDICでは炎症性蛋白であるフィブリノーゲンが上昇するため低値にならない場合があったり、WF使用患者の重篤出血時に「ケイツー」が使われるが、最近では「ケインセントラ(4F-PCC)」が使われたりと治療や疾患、治療薬についての知識も身につけられるとよい。このように凝固検査では、正しい検査値を得るために知っておくべきこと、考慮すべきことが多くあるため、日々の研鑽にて知識と技術を習得し、時には臨床に採血状況や患者情報を確認しながら、検査を進めていくことが必須であると感じる講演であった。

提出日:2023年9月8日
文責:加藤鉄平

新人および血液初心者必見!!血液検査データの解説のコツ :2023年5月18日

生 涯 教 育 研 修 活 動 報 告 書

血液検査研究班

1 実施日時: 2023年5月18日    19時00分~20時30分

2 会 場 : Web開催  教科・点数:専門教科-20点

3 主 題 : 新人および血液初心者必見!!血液検査データの解説のコツ
        講演1:基本から再確認!血液分析装置からみる血液検査
        講演2:貧血からみるデータの読み方

4 講 師 : 講演1:中山 智史(防衛医科大学校病院)
        講演2:網野 育雄(埼玉医科大学国際医療センター)

5 協 賛 : なし

6 参加人数: 会員 217名 賛助会員 0名 非会員 0名

7 出席した研究班班員: 中山智史 網野育雄 堀口大介 堀内雄太 澁川絵美 加藤鉄平 島田崇史 吉澤悟 石田沙妃

8 研修内容の概要・感想など
 講演1では、自動血球分析装置の測定原理および特性などの基本的な内容から、分析装置の測定によって得られたデータの見方、考え方の話があった。検体を機械に乗せるだけで赤血球数などのCBCデータから白血球分画まで様々な項目を詳細に測定してくれる自動血球分析装置だが、得られたデータが患者の病態を反映している真値なのか、または採血手技や他の要因で間違った値が得られているのかは、装置の特性をしっかりと理解していないと判断ができない。しばしば採血手技によりフィブリンが析出している検体や採血管に含まれるEDTAにより血小板が低値を示す検体に出会うが、装置が出すフラグや流動分布図を見ることで報告前に一度立ち止まり確認することができる。普段ルーチン業務として装置を扱う方はもちろんのこと、夜勤の時のみ装置を扱う方も使用している装置の基本的な原理、特性は理解しておく必要がある。
 講演2では、日常業務で一番出会う頻度の高い貧血のデータについての見方、考え方について講演があった。貧血は「赤血球の産生低下」「赤血球崩壊の亢進」「失血」により引き起こされるという話があったが、ただHbが低いから貧血という考えではなく、どういう貧血で何が原因で起きているのかを考えることでそのデータが正しいのかを見るだけでなく、次に行われる血液像目視の際にも特定の疾患を疑いながら検査をすることができ、より精度の高い検査結果を臨床に渡すことができると考えられる。分析装置に対する理解と疾患に対する知識を持って、正しい検査データを出せるよう研鑽していかねばと思わされる研修会であった。

提出日:2023年5月28日
文責:加藤鉄平

令和4年度埼玉県・埼玉県医師会臨床検査精度管理事業報告 :2023年4月20日

生 涯 教 育 研 修 活 動 報 告 書

血液検査研究班

1 実施日時: 2023年4月20日    19時00分~20時30分

2 会 場 : Web開催  教科・点数:基礎教科-20点

3 主 題 : 令和4年度埼玉県・埼玉県医師会臨床検査精度管理事業報告(血液)
       講演1:フォトサーベイ回答・解説
       講演2:基礎から学ぼう!血液検査における精度管理

4 講 師 : 講演1:吉澤 悟(壮幸会 行田総合病院)
        講演2:堀内 雄太(川口市立医療センター)

5 協 賛 : なし

6 参加人数: 会員 41名 賛助会員 1名 非会員 0名

7 出席した研究班班員: 中山智史 堀口大介 堀内雄太 澁川絵美 加藤鉄平 島田崇史 吉澤悟 石田沙妃

8 研修内容の概要・感想など
 講演1では、吉澤氏によりフォトサーベイの回答・解説が行われた。設問は5問あり、それぞれの回答の集計結果と共に、細胞の特徴、注意すべき検査結果について解説があった。写真1はEDTA依存性血小板凝集の症例で、機序や対応方法、採血困難時の血小板凝集像との違いについての話があった。写真2、3は赤血球の異常形態で標的赤血球と破砕赤血球が出題され、貧血の種類、その他の異常赤血球とそれらの報告基準について解説があった。写真4、5は多発性骨髄腫の症例で、赤血球連銭形成と形質細胞が出題され、疾患の概要と他の分野で見られる異常値、骨髄検査所見を交えて解説された。これから血液検査に携わる人やほとんど血液像を見ない施設の方へ向けて、臨床でよく遭遇する細胞から疾患関連性の高い細胞まで種々の細胞が出題されていた。形態学は経験の差が出てしまうため、各施設で定期的に内部精度管理をすることで、標準化を図れると思われる。
 講演2では、堀内氏により血液検査分野における内部精度管理について講演が行われた。医療法改正により、標準作業書や作業日誌等が必須になったことで、検体検査の精度確保のための環境・体制整備が推進された。これにより施設内の作業が標準化され、精度保証につながっている。検査実施の際には、使用機器の内部精度管理が必要であり、測定頻度や管理幅等を各施設で設定することが重要となる。機器を用いない形態学検査では技師間差が見られるため、定期的な目合わせを行うことが推奨される。また、凝固検査では採血や遠心作業等の検査前工程が検査値に大きく影響を与えるため、各施設で検査前プロセスを検証する必要がある。内部精度管理だけでは、他施設との互換性が取れないため外部精度管理にも積極的に参加する必要があるとの話があった。日常的に行っているが、精度管理、精度保証は大変重要である。一見すると正しく測定できている値でも外部精度管理を行うと乱れているとわかることもある。正しい検査値を臨床に返すために日々、精度管理を意識して、業務に務めなければと感じる講演であった。

提出日:2023年5月1日
文責:加藤鉄平

2022年度 活動報告

骨髄検査初級者・二級・血液認定目指す方必見!!基礎から始める骨髄形態セミナー:2023年1月22日

生 涯 教 育 研 修 活 動 報 告 書

血液検査研究班

1 実施日時:2023年1月22日  12時30分~17時00分

2 会 場 :学校法人明星学園 国際医療専門学校  教科・点数:専門教科-20点

3 主 題 :骨髄検査初級者・二級・血液認定目指す方必見!!
       基礎から始める骨髄形態セミナー

4 講 師 :講師1 星聖子(独立行政法人 地域医療機能推進機構さいたま北部医療センター)
       講師2 中山智史(防衛医科大学校病院)
       講師3 澁川絵美(自治医科大学さいたま医療センター)

5 協 賛 : なし

6 参加人数: 会員 27名 賛助会員 0名 非会員 0名

7 出席した研究班班員:中山智史 澁川絵美 星聖子 加藤鉄平 島田崇史 吉澤悟 石田沙妃

8 研修内容の概要・感想など
 今回の研修会は第1回骨髄形態セミナーとして、実習形式で行われた。始めに事前に参加者に配布していた骨髄細胞画像30問の解説を行い、その次に骨髄検査の基礎から標本観察方法についての講義、最後に顕微鏡を使用した標本観察を行い、骨髄標本から得られた所見をまとめ、それの解説を行った。以下に参加者の感想を掲載する。



株式会社ビー・エム・エル
加賀 朋子
 この度は研修会を開催していただきありがとうございました。私は10年以上のブランクの後に再び臨床検査技師として勤務を開始しましたが、知識が足りていない事を日々痛感していました。そのため基礎から学び直したいと思い参加しました。普段の業務で骨髄標本を鏡検することがなかったため、基本的な質問をしてもすぐご指導いただける環境でしたのでとても勉強になりました。学んだことを今後の業務にいかしていきたいです。

済生会川口総合病院
星 このみ
 今回初めて骨髄形態セミナーに参加させていただきました。当院では骨髄検査を行なっていますが、症例数はとても少なく貴重な症例の検討をさせていただき、とても勉強になりました。
  骨髄形態セミナー受講前に頂いた事前資料の30症例においては、骨髄中の各細胞の鑑別のポイントを解説していただき、鏡検前自分なりに基礎の確認をすることができました。骨髄検査の基礎知識における講義では、骨髄検査の検体採取からはじまり、標本評価から報告書作成ポイントまで細かく解説していただきました。知識が未熟な私は、骨髄検査所見用紙に準じて観察を進めていくことが一番スキルアップに繋がるのだと改めて感じました。鏡検実習においては、色々な症例を研究班員の方にお聞きしながらも、自分で考える時間を設けていただき、とても充実した時間でした。また機会があればぜひ参加し、スキルアップに努めていきたいです。



提出日:2023年1月22日
文責:加藤鉄平

初心者・初級者血液形態セミナー ~デジタル機器を用いて血液形態を共有しよう~:2022年11月27日

                         生 涯 教 育 研 修 活 動 報 告 書

                                                          血液検査研究班

1 実施日時:2022年11月27日9時30分 ~ 16時00分

2 会 場 : 学校法人 明星学園国際医療専門学校  点数:専門 ― 20点

3 主 題 : 初心者・初級者血液形態セミナー
      ~デジタル機器を用いて血液形態を共有しよう~

4 講 師 : 血液検査研究班

5 協 賛 : シスメックス株式会社

6 参加人数: 会員18名  賛助会員2名 学生10名

7 出席した研究班班員:中山智史、網野育雄、堀内雄太、澁川絵美、星聖子、加藤鉄平、島田崇史、吉澤悟、石田沙妃

8 研修内容の概要・感想など
 午前中は中山氏により、血液形態学の基礎的な講演が行われ、午後からは実習室にて、鏡検実習が行われた。小テストで班分けをし、3名のグループに1つモニターを置き、講師が実際に見ている目的の細胞を映し出し、それを参考にしながら鏡検を行った。基本的な細胞から病的な細胞まで形態学的な特徴を学ぶことができ、基礎から実践まで学べる講習会であった。以下に参加者の感想を掲載する。

 

 

防衛医科大学校病院
福島 明音
この度は、研修会を開催していただきありがとうございます。
私は、昨年12月に血液検査室に配属となり経験や知識が未熟であり、今回の研修会で基礎を学びたいと思い参加させていただきました。研修会午前の講義では、検体準備から形態の観察・染色などの基礎を学び、午後の実習では実際に症例標本を用いて様々な細胞を鏡検しました。鏡検時は直ぐに不明な点を講師の方々に質問できる環境でしたので、自身のスキルアップに繋がりました。また、血液形態学は様々な細胞を鏡検し、それらを経験する事が上達する一番の近道だと思いましたので、日常業務に学んだ事を活かしていきたいです。


公益社団法人 三越厚生事業団 三越診療所
松沢 奈津美
この度は、久々の現地開催の研修会の開催ありがとうございます。私は、診療所の業務としてまだ血液検査には携わってはおりませんが、午前の講義及び午後の実習を終えて改めて血液検査の知識が増したことを実感いたしました。この経験を活かし、今後の日常業務に邁進させていただこうと思います。



提出日2022年 12月 7日
文責:加藤鉄平

検査からみえる疾患を知ろう!:2022年10月28日

                          生 涯 教 育 研 修 活 動 報 告 書

                                                          血液検査研究班

1 実施日時:2022年10月28日  19時00分 ~ 20時30分

2 会 場 :  Web開催   点数: 専門 ― 20点

3 主 題 :検査から見える疾患を知ろう!
      講演1:CML検査と病態
      講演2:CML治療と今後の治療変遷

4 講 師 :講演1:渡邊 純一(TMGあさか医療センター 血液内科部長)
       講演2:関口 康宣(地方独立行政法人埼玉県立病院機構 埼玉県立がんセンター 血液内科課長 兼 診療部長)

5 共 催 : ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社

6 参加人数: 会員132名  賛助会員4名 非会員0名

7 出席した研究班班員:中山智史、網野育雄、堀内雄太、澁川絵美、星聖子、加藤鉄平、島田崇史、吉澤悟、石田沙妃

8 研修内容の概要・感想など
骨髄増殖性疾患である慢性骨髄性白血病(CML)はBCR-ABL融合遺伝子が原因となる疾患で、造血幹細胞レベルに異常が発生し、分化は正常だが血液細胞3系統の増殖が亢進した疾患である。一般的には白血球系を中心とした増殖を認め、幼弱な顆粒球系細胞、好塩基球や好酸球のような割合が少ない顆粒球系細胞が目立つようになる。多くの症例にフィラデルフィア染色体と呼ばれる、9番と22番の染色体転座が見られ、BCR-ABL融合遺伝子が発現する。正常なABL1遺伝子ではミリストイル化N末端で細胞増殖の制御をしているが、ここがBCR-ABL融合遺伝子に代わることで非活性状態になることができず、血球が増殖する。認められる症状としては肝脾腫に伴う腹部膨満感、サイトカイン上昇による全身倦怠感、高ヒスタミン血症による全身掻痒感、骨髄内細胞増殖による骨痛などがある。しかしながら50%は無症状で、健康診断で白血球と血小板増加を指摘されて発覚することが多い。その他の骨髄増殖性疾患として真性多血症、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症があり鑑別が重要である。
臨床ではCBCでの汎血球増加、白血球分画での幼弱な顆粒球系細胞、好塩基球、好酸球の増加、症状、VitB12高値、NAPスコア低値などによりCMLを疑い、FISH法、PCR法、G分染法などで遺伝子、染色体の異常を検査しBCR-ABL融合遺伝子が確認できれば診断が確定する。臨床経過は慢性期と呼ばれるBCR-ABL単独異常による増殖活性の亢進から始まり、BCR-ABLの点突然変異を経て、移行期、急性転化期と進んでいく。慢性期ではBCR-ABLの単独異常のため、TKIが著効するが、ほかの異常が加わった移行期や急性転化期では効果が乏しくなる。移行期、急性転化期には診断基準があり、移行期では末梢血あるいは骨髄における芽球割合が10~19%、末梢血における好塩基球割合が≧20%などが基準となり、急性転化期では芽球割合が≧20%、髄外病変の出現等が基準となる。
診断・治療の評価法としてIS-PCR法が用いられており、BCR-ABLが何%あるのかで治療効果の判定ができ、細胞遺伝学的完全奏功(CCyR)、分子遺伝学的大奏功(MMR)などの分類があり、臨床ではMMRより深い奏功であるMR4.0以下のDeep molecular response(DMR)を目指して治療が行われる。TKIの登場により予後は格段に改善され、第二世代の登場によりさらに改善している。早期の深い寛解(EMR)が予後に影響することも判明しており、第二世代がより有望であることも分かっているが、薬により副作用等も異なるため、リスク別に第一世代と使い分ける必要がある。
CMLは末梢血液像である程度予測がつく疾患であるため、臨床検査技師が慢性期のタイミングで正しく臨床にデータを渡せることが重要である。そのため、形態学について良く学び、様々な疾患についてもよく知識を入れておくことが大切である。
                                                       提出日2022年11月9日
                                                          文責:加藤鉄平

自動血球分析装置の特性 part2 最新トピックスも併せて:2022年8月19日

         生 涯 教 育 研 修 活 動 報 告 書

                            血液検査研究班

1 実施日時:2022年 8月 19日 19時 00分 ~ 20時 30分

2 会 場 : Web開催 点数:専門 ― 20点

3 主 題 : 自動血球分析装置の特性 part2 最新トピックも併せて
        講演1:UniCel DxH 900シリーズ
            コールターセルラーアナリシスシステムの特性
        講演2:血液学的検査における血液分析装置のポジショニングと次ステージ

4 講 師 : 講演1:滝上 能久(ベックマン・コールター株式会社)
       講演2:池田 尚隆(シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス株式会社)

5 協 賛 : なし

6 参加人数: 会員42名  賛助会員9名 非会員0名


7 出席した研究班班員:中山智史、堀口大介、堀内雄太、澁川絵美
            加藤鉄平、島田崇史、吉澤悟、石田沙妃

8 研修内容の概要・感想など
前回の研修会に続き、両講演ともに自動血球分析装置における基本的な測定原理、検査機器ごとの特性とそれを用いた応用についての講演であった。自動血球分析装置の特性part1、2と計4社の分析装置について講演があったが、各社少しずつ違いがあり、その差異や特性を理解することが大切であると感じた。研修会では特定の疾患に関する知識や検査方法を学ぶ機会が多いように思うが、用手法ではなく、自動化されている機器の検査方法について学ぶことによって、そこから得られた検査値をしっかりと理解して臨床に提供することができるため大変重要であると感じた。今回の講演は自動血球分析装置についてであったが、血液分野だけではなく自身が関わる全ての分野に関して最新の情報を取り入れながら研鑽していかなければならないと改めて考えるものであった。
                                                       提出日2022年9月1日
                                                           文責:加藤鉄平

自動血球分析装置の特性 part1 最新トピックも併せて:2022年7月5日

生 涯 教 育 研 修 活 動 報 告 書

血液検査研究班

実施日 : 2022年 07月 05日 19時 00 分 ~ 20時 30分

会 場 : Web開催   点数:専門―20 点

主 題 :自動血球分析装置の特性 part1 最新トピックも併せて
     講演1:血球算定と干渉物質の影響
        ~全自動総合血液学分析装置Alinity hqの有用性~
     講演2:血液検査におけるピットホールと多項目自動血球分析装置XRシリーズの特性について

講 師 :講師1:生田 勇太郎(アボットジャパン合同会社)
     講師2:館野 真介(シスメックス株式会社 北関東支店)

参加人数: 会員 82名  賛助会員 7名  申請中 0名   計 89名 

出席した研究班班員:中山智史、澁川絵美、星聖子、堀内雄太、加藤鉄平、島田崇史、吉澤悟、石田沙妃


研修内容の概要・感想など
 両講演ともに自動血球分析装置における基本的な測定原理、検査機器ごとの特性とそれを用いた応用についての講演であった。普段何気なく使用している自動血球分析装置はCBC、Diffの数値的な結果だけでなく、その他多くの情報を表示していることを改めて認識した。検査を行う上で干渉物質、検体性状による偽低値、偽高値を把握しておくことは必須であり、どのよう工夫をすれば真値を臨床に返すことができるかを知っておく必要がある。またヒストグラム、スキャッタグラムについて深く知ることで測定値から得られることは多くなり、そのあとに行う目視での白血球分類、異常細胞の発見にも活かすことができる。装置の測定原理だけでなく各社の機器特性についてもしっかりと理解しておくことでより正確な結果を手に入れることができるため、自施設の使用機器についても知識、理解を深めていくべきであると感じた。

(文責:加藤鉄平)

凝固検査の理解を深めよう!:2022年5月26日

生 涯 教 育 研 修 活 動 報 告 書

血液検査研究班

実施日 : 令和 04年 05月 26日 19時 00 分 ~ 20時 30分

会 場 : Web開催   点数:専門―20 点

主 題 :凝固検査の理解を深めよう!

講 師 : 須長 宏行
(積水メディカル株式会社カスタマーサポートセンター学術企画グループ)

参加人数: 会員 215名  賛助会員 7名  申請中 0名   計 222名 

出席した研究班班員:中山智史 堀口大介 堀内雄太 澁川絵美 星聖子 島田崇史 吉沢悟 石田沙妃

研修内容の概要・感想など
 凝固検査では、検体の処理や検査結果の妥当性の確認等、検査プロセスにおいては外部精度管理により標準化されてきているが、検査前の検体採取や検体搬送等については標準化が進んでいないのが現状である。検体採取(採血)は、採血者により技術的誤差が生じやすい。また採血管別の受け入れ不可検体の調査では、凝固採血管が最も受け入れ不可数が多く、その理由の大半は量の過不足であったという調査結果を示していただいた。量の過不足は直ちに注意・改善出来る点であり、採血は検査前の重要なプロセスであるという認識を持って、今後は採血業務にあたっていただきたい。
 検体の取り扱いに関して、凝固採血管の許容採血量は±10%であること、採血後は速やかに5回泡立たないように転倒混和し、室温(18~25℃)にて保存すること等、基礎的な知識として再確認した。遠心分離にはいくつかの条件があり、各施設で設定の検討が必要である。検体の分注時は、バフィーコートより最低5mm離れた上清を取ることが重要で、リン脂質を含んだ血小板を混入させない目的がある。
 凝固検査の異常値を判断するうえで、病態や治療を反映した値なのか、分析装置や試薬に由来するものなのか、採血や採血管に由来するものなのか、これらを見極めることが必要であり、臨床症状と合わない場合は再採血を依頼するなどの対応を検討する。また、遠心後のバフィーコートの性状を確認して境界面に凹凸があれば検体凝固を疑うため、異常値の判断の補助となり得ると感じた。
 質疑応答も盛んに行われ、外注提出時は血漿を-70℃に保存することが望ましい点や、溶血の原因がどこにあるのかを把握することが必要となる点、乳び検体は超遠心後に浮いた脂質を除いて測定する点など、日常業務に役立つポイントを教えていただいた。

(文責:澁川絵美)

令和3年度埼玉県・埼玉県医師会臨床検査精度管理事業報告 :2022年4月21日


生 涯 教 育 研 修 活 動 報 告 書

血液検査研究班

実施日 : 令和 04年 04月 21日 19時 00 分 ~ 20時 30分

会 場 : Web開催   点数:専門―20 点

主 題 :令和3年度埼玉県・埼玉県医師会臨床検査精度管理事業報告
     講演1:フォトサーベイ回答・解説
     講演2:国際ガイドラインCLSIに基づいた血液学的検査の精度管理

講師1:堀口 大介(獨協医科大学埼玉医療センター)
講師2:池田 尚隆(シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティックス株式会社)

参加人数: 会員 35名  賛助会員 2名  申請中 0名   計 37名
出席した研究班班員:中山智史、堀口大介、澁川絵美、星聖子、堀内雄太、加藤鉄平、島田崇史、吉澤悟


研修内容の概要・感想など
 講演1では、堀口氏によりフォトサーベイの回答・解説が行われた。
設問は5つあり、それぞれ回答の集計結果と共に、細胞の特徴、注意すべき検査結果について解説があった。写真1は腫瘍性リンパ球(ATL細胞)であり、反応性(異型)リンパ球と腫瘍性リンパ球の違いやリンパ球増多症における鏡検ポイントなどの話があった。写真2~4についてはMDSの症例であり、それぞれ類似する細胞との鑑別やMDSのWHO分類についての話があった。写真5はAPLの症例で、回答であるファゴット細胞について、PML-RARA遺伝子異常についての話があった。これから血液検査に携わる人やほとんど血液像を見ない施設の方へ向けて、わからない細胞に遭遇した時にどのように対処すべきか、他の技師や担当医とのコミュニケーションの必要性など、日常に役立つ講演内容であった。
 講演2では、国際ガイドラインであるCLSIを基に、精度管理について基本的なところから現状の課題等、様々な話を聞くことができた。血液学分野と生化学分野の精度管理試料では、性状や保存方法、保存期間などが異なり、国際的標準物質がない現状がある。また血液検査装置のキャリブレーションの考え方や実施方法が統制されていないため、施設毎、担当者毎で手法が異なっている等、血液学的分野の精度管理に対する問題点を認識することができた。どの分野においても精度管理は非常に重要であり、個々の技師が精度管理についての知識を深め、まずは施設内で手法を統一し、このような研修会を用いて施設間差をなくしていくことが重要であると感じた。

(文責:加藤鉄平)

2021年度 活動報告

知っておきたい!骨髄腫の検査ポイント :2021年2月3日

生 涯 教 育 研 修 活 動 報 告 書

血液検査研究班

実施日 : 令和 04年 02月 03日 19時 00 分 ~ 20時 30分
会 場 : Web開催   点数:専門―20 点

主 題 :知っておきたい!骨髄腫の検査ポイント
     講演:骨髄腫の検査の読み解き方~症例を交えて~

講 師 : 堀内 俊克
     (なんてんクリニック 院長)

参加人数: 会員 123名  賛助会員 0名  申請中 0名   計 123名 
出席した研究班班員:中山智史 原誠則 網野育雄 神成千晴 軍司雅代 澁川絵美 星聖子 堀口大介 堀内雄太 


研修内容の概要・感想など
今回は、骨髄腫の検査の読み解き方についての講演がWeb環境下にて行われた。
形質細胞は通常でれば骨髄中に1%程度であるが、形質細胞が腫瘍化し、10%以上になると多発性骨髄腫と診断される。腫瘍化した形質細胞はM蛋白(役に立たない抗体)を大量に産生し、これが蛋白分画や免疫電気泳動といった検査にて検出される。その他、骨髄のフローサイトメトリーやFISHも多発性骨髄腫における重要な検査となる。また、診断事象として、CRAB(高カルシウム血症、腎不全、貧血、骨病変)が知られており、これらが影響して様々な症状が起こる。
治療に関して、移植の有無による化学療法の進め方の違い等、詳細な解説があった。治療してもIgGの値が下がらない事象については、免疫グロブリンの半減期がポイントとなり、IgGでは半減期21日であるため、治療により腫瘍細胞のIgG産生量が減っていても、見かけ上、IgG量は多いままということが起こり得る。今後検査結果を確認する際は、半減期を意識しようと感じた情報であった。治療効果判定には、感度の高い免疫固定法が用いられるが、その際治療薬が検出されてしまうことがあるため、遊離κ/λ比等の他の検査を踏まえ、総合的に判断する必要があるとのことであった。
質疑応答では、BJPは尿中に多く排泄されてしまうため、血清で必ず陽性になるわけではない点や、骨髄検査にて形質細胞が10%に満たない場合でも、割合のみに捉われず、細胞形態の異常など診断に有用な情報を報告することが重要であるとの解説があった。
骨髄検査を行っていない施設でも、高カルシウム血症やM蛋白の検出といった、多発性骨髄腫に特徴的な検査結果を見逃さないことが診断の一助となると感じた研修会であった。


 (文責:澁川絵美)

初心者・初級者血液形態セミナー 基本形態から症例提示:2021年12月11日


生 涯 教 育 研 修 活 動 報 告 書

血液検査研究班

実施日 : 令和 3年 12月 11日 9時 00 分 ~ 12時 00分
会 場 : Web開催   点数:専門―20 点

主 題 : 初心者・初級者血液形態セミナー
     基本形態から症例提示
     講演1:白血球形態とスキャッタグラムpart1
     講演2:初心者・初級者要チェック 血液形態 ~基礎編~
     講演3:白血球形態とスキャッタグラムpart2
     講演4:初心者・初級者要チェック 血液形態 ~症例編①~
     講演5:初心者・初級者要チェック 血液形態 ~症例編②~
     講演6:初心者・初級者要チェック 血液形態 ~症例編③~

講 師 : 講演1:館野真介(シスメックス株式会社 北関東支店 学術サポート部)
     講演2:堀内雄太(川口市立医療センター)
     講演3:館野真介(シスメックス株式会社 北関東支店 学術サポート部)
     講演4:澁川絵美(自治医科大学附属さいたま医療センター)
     講演5:中山智史(防衛医科大学校病院)
     講演6:加藤鉄平(埼玉県済生会栗橋病院)

参加人数: 会員 37名  賛助会員 1名  申請中0名   計 38名 
出席した研究班班員:中山智史 原誠則 網野育雄 神成千晴 軍司雅 澁川絵美 星聖子 堀口大介 堀内雄太 加藤鉄平


研修内容の概要・感想など
例年であれば現地開催となる血液形態セミナーであるが、コロナ渦という状況を踏まえ、初めてWeb開催の形式とした。現地開催であれば、参加者一人一人が顕微鏡を覗きながらの実習形式で実施できたが、Web開催であっても、より実習形式に近い研修内容になるよう準備を進めてきた。
白血球形態とスキャッタグラムについては、part1・2に分けて測定原理やスキャッタグラムの見方等を学んだ。それぞれの試薬の特性や、スキャッタグラムから想定できる疾患や病態等、日々の業務に生かせる内容であった。
血液形態については、基礎編と症例編に分けて学んでいった。より多くの細胞を見てもらいたいが、当日は時間も限られているため、事前にホームページ上にデータシートを提示して、参加者が事前に考える時間を設けた。基礎編では約30細胞を提示し、それぞれの細胞の形態的特徴や見極めるポイント等を解説していった。症例編では、初心者や初級者が特に注意してもらいたい症例を3症例、成人T細胞性白血病(ATL)、急性前骨髄球性白血病(M3)、慢性骨髄性白血病(CML)の順に提示した。
Web形式での開催ということもあり試行錯誤の部分もあったが、参加者の要望に応えた研修会になるよう準備を進めていくので、来年度の血液形態セミナーも是非参加していただきたい。


(文責:澁川絵美)

リンパ腫と関連検査について:2021年10月28日

生 涯 教 育 研 修 活 動 報 告 書

血液検査研究班

実施日 :令和 3年 10月 28日 19時 00 分 ~ 20時 30分
会 場 :Web環境
点 数 :専門―20 点
主 題 :リンパ腫と関連検査について
講 演①:活用しよう!フローサイトメトリー解析
講 師①:網野 育雄(埼玉医科大学国際医療センター)

講 演②:血液がんと可溶性IL-2レセプターについて
講 師②:福田 雅之助(H.U.フロンティア株式会社 テクニカルサポート課)


参加人数: 会員 106名 +賛助会員3名+ 申請中0名   計109 名
出席した研究班班員:中山智史 原誠則 網野育雄 神成千晴 澁川絵美 星聖子 堀口大介 加藤鉄平


研修内容の概要・感想など
リンパ腫と関連検査について、フローサイトメトリー解析を網野氏、可溶性IL2-Rを福田氏、それぞれの講演がWeb環境下にて行われた。
講演1では、フローサイトメトリー(FCM)はリンパ腫の診断、病型分類に用いられ、その原理や実際の症例を提示しながらの解説をしていただいた。FSC(前方散乱光)とSSC(側方散乱光)により得られるサイトグラムにて、リンパ球、単球、顆粒球はそれぞれの領域に分けられ、まずは目的とする領域をゲーティングする必要がある。この時、鏡検時の細胞形態の情報等からゲーティングの位置を決定していくと良いが、実際には外注検査に委託している施設も多く、必要に応じてゲーティングの位置の変更を依頼すると良いとのことであった。質疑応答も盛んに行われ、骨髄は凝固しないように採取することが重要である点や、陽性と判定するのは20%以上とする点、想定した結果と違いが生じたら、ゲーティングの位置の確認や使用する蛍光色素を変えてみる等、実際の業務に役立つ情報を多数いただいた。
講演2では、3大血液がんのひとつとも言われる悪性リンパ腫の基礎知識から始まり、分類や進行速度の違い、臨床経過、治療に至るまで悪性リンパ腫について学んだ。その中でも、可溶性IL-2R(sIL-2R)は、非ホジキンリンパ腫および成人T細胞白血病/リンパ腫において高値となり、診断の補助や治療効果判定、再発の早期発見の指標として活用されている。特に成人T細胞白血病/リンパ腫ではsIL-2Rが高度上昇することが知られており、この疾患についても解説いただいた。
近年では悪性リンパ腫の罹患率は増加傾向にあり、日頃の業務においても遭遇する機会は少なくない。悪性リンパ腫が疑われた際には、FCMやsIL-2Rの結果に着目する等、この研修で得た情報を役立てていきたい。


(文責:澁川絵美)

凝固検査の基礎知識:2021年8月19日

生 涯 教 育 研 修 活 動 報 告 書

血液検査研究班

実施日 :令和 3年 08月 19日 19時 00 分 ~ 20時 30分
会 場 :Web環境 
点 数 :専門―20 点
主 題 :凝固検査の基礎知識
講 演 :若手検査技師と夜間当直者のための凝固検査の基礎知識
講 師 :須長 宏行
    (積水メディカル株式会社 カスタマーサポートセンター学術企画グループ)

参加人数: 会員 171 名 + 申請中0名   計 171 名 
出席した研究班班員:中山智史、原誠則、網野育雄、神成千晴、軍司雅代、澁川絵美、星聖子、堀内雄太、加藤鉄平


研修内容の概要・感想など
まず真空採血管取り扱いの基礎知識として、採血管の種類と取り扱い時の注意点、オーバーキャップタイプの採血管の有用性をお話いただいた。オーバーキャップタイプは検体部分への接触防止や飛沫防止等、採血者、検査室双方にメリットがあり、今後新しい採血管を導入する機会があれば検討してみたいと感じる内容であった。
標準採血法ガイドラインが2019年3月に改定され、その中でも採血法の選択について重点的にお話いただいた。注射器採血には針刺しや検体凝固等のリスクがあり、改訂版では採血法の第一選択としてホルダー採血が示された。ホルダー+翼状針採血により神経損傷のリスクが軽減される等メリットが多くあるが、チューブ内のデッドスペース分の採血量が不足するというデメリットを理解したうえで使用しなければならない。
採血手技が測定値に与える影響として、溶血、駆血、検体量等が挙げられ、溶血により偽高値または偽低値になる項目や、駆血により偽高値になる項目を示していただき、静脈採血での駆血は1分以内が望ましいとのことであった。採血量不足により影響が出る主な項目として、APTT延長、PT短縮等、凝固検査への影響が大きい。
凝固検体取り扱いに関するコンセンサスとして、採血から血漿分離、測定、保存について詳しくお話いただいた。特に、採血後の検体(遠心分離前)は18~25℃の室温で保存し、速やか(1時間以内)に遠心分離、遠心分離では残存血小板数が1万/μl未満になるよう遠心機を設定することが重要となる。凍保存する場合は-75℃以下が望ましく、融解する際は37℃水溶中で3~5分の急速融解が良いとのことであった。
遭遇する可能性のある凝固検査の異常値として、採血困難時のFDP、DDの偽高値や、ヘパリン混入時の異常延長等があり、これらは日常の検査において常に注意すべき項目である。
最後にCOVID-19陽性患者では、LA検査実施した内の91%で陽性であったこと等、新型コロナウイルス感染症と関連した話題を提供いただいた。
質疑応答では多くの質問が寄せられ、それぞれ丁寧に解答いただき、若手検査技師のみならず、全ての検査技師にとって大変有用な講演内容であったと思われる。

(文責:)澁川絵美

末梢血液像について学ぼう:2021年6月16日

生 涯 教 育 研 修 活 動 報 告 書

血液検査研究班

実施日 :令和 3年 6月 16日 19時 00 分 ~ 20時 30分
会 場 :Web環境 
点 数 :専門―20 点
主 題 :末梢血液像について学ぼう
講 演 :標本作製から形態観察までのいろは
講 師 :中山洋一(アボットジャパン合同会社 ヘマトロジー推進部 学術担当)

参加人数: 会員 139 名 + 申請中0名 + 計139 名 
出席した研究班班員:中山智史、原誠則、網野育雄、神成千晴、軍司雅代、 澁川絵美、星聖子、堀内雄太、堀口大介 、加藤鉄平


研修内容の概要・感想など
 今回はアボットジャパン合同会社の中山氏により、標本作製から形態観察までのいろはについてご講演いただいた。標本作製では染色の原理・歴史から始まり、各染色液の特徴、染色の際のポイントなど、形態観察では核や細胞質がどのような色調に染まり、それを鑑別していく際のコツなどをお話いただいた。塗抹標本は作成後、染色の際の固定不良を防ぐために十分に乾燥を行う必要がある。日本ではドライヤー等を使い直ちに冷風乾燥するが、欧米では湿度が低いため自然乾燥が一般的なようである。標本の固定はしっかりと行う必要があり、顆粒の染色が良好なライトまたはメイ・グリュンワルド染色液で行う。その後、核の染色が良好なギムザ染色液に移行するが、重要なのは緩衝液のpHであり、至適pH(6.4~6.8)にて使用しなければならない。緩衝液は色素のイオン化に必須であり、色調を整える作用がある。また、ギムザ希釈液を調製する際の注意点として、ギムザ原液はしずかに少しずつ注ぎ、軽く攪拌しなければならない。染色の後は長すぎず短すぎず、適度な水洗をして乾燥すれば、標本が完成する。染色不良があると、好中球の脱顆粒状態が鑑別できないなど、異常所見の判定にも影響するため、まずは適切な血液塗抹標本を作製できるよう、各施設で環境を整えることが重要であると感じた。
形態観察では、正常な細胞の外観(大きさ、形状)、細胞質(色調、顆粒、空胞、封入体など)、核(N/C比、クロマチン構造、核小体)について解説していただき、実際の細胞ではどのように見えるか写真で示していただいた。リンパ球と単球は鑑別に迷うこともあるが、迷った時は細胞質で鑑別すると良いとのアドバイスであった。リンパ球は細胞質に透明感があり、単球はすりガラス状でくすんだ感じに見える。顆粒球系幼若細胞の分類は、日本検査血液学会の分類基準に基づき、細胞の連続画像を見ながら解説いただいた。細胞鑑別のコツとして、判断理由を明確にすること、迷ったら成熟段階を一段落とすこと、たくさんの標本を観察し、正常細胞を体に染み込ませること等、わかりやすくお話いただいた。
きれいな塗抹標本の作製がいかに細胞鑑別に重要であるかを再認識し、細胞鑑別では判断理由となる根拠を明確にすることの必要性と、その根拠を裏付ける知識の習得が重要であると感じた講演であった。

(文責:)澁川絵美

採血の安全性:2021年5月12日

生 涯 教 育 研 修 活 動 報 告 書

血液検査研究班

実施日:令和 3年 5月 12日 19時 00 分 ~ 20時 30分
会 場:Web環境
点 数:専門―20 点主 題:採血の安全性
講 演:標準採血法ガイドラインGP4-A3より採血の注意点と採血手技が検査値に与える影響、採血現場における接遇の考え方
講 師:塚田正敏(極東製薬工業株式会社 営業推進部門 営業学術 学術2課)

参加人数: 会員 119 名 + 申請 1名 + 計 120 名 
出席した研究班班員:中山智史、原誠則、網野育雄、神成千晴、軍司雅代、 澁川絵美、星聖子、堀内雄太、堀口大介 、加藤鉄平


研修内容の概要・感想など 
極東製薬工業株式会社の塚田氏により、前半は採血の注意点等を標準採血法ガイドラインに沿ってお話いただき、後半には採血現場における接遇についてお話いただいた。 
採血法にはホルダー採血(真空採血)法と、注射器採血法があり、一般的にはホルダー採血が望ましいが、それぞれの方法の利点と欠点を理解した上での採血が必要となる。特に翼状針を用いたホルダー採血の場合、チューブ内に残る血液量が問題となるため、1番目に凝固検査や血沈など採血量を正確にする必要があればダミー採血管を差し込む等の対応が必要となる。採血では合併症を起こすこともあり、頻度としては少なくても年間に行われる採血数を考えれば一定の件数は起こり得る。主に神経損傷や血管迷走神経反応(VVR)、アレルギー等があるが、患者は“採血は何事も無く行われて当たり前”という意識から、合併症の存在を知らないことも多く、事前の説明や起こった際の対応が重要となってくる。採血中は患者を注意深く観察し、緊急時には素早い対応ができるよう常に備えておくことも大切である。検査項目によっては採血手技の影響を受けやすいものもあり、特に溶血ではLD,AST,鉄,カリウム等が偽高値となることが知られている。駆血による影響もあるため、駆血は1分以内が望ましいとされるが、実際には難しいことも多く、可能な限り駆血時間を短く出来るよう努めることが重要となってくる。また採血管ごとに至適採血量があるため、採血量の過剰・不足には十分に注意する必要がある。 
接遇とは、患者対応全般の基本姿勢を指し、何を理由に病院を選んでいるかというアンケート調査においても専門性が高い、家族からのすすめ等の項目と同等の割合で接遇が重要視されている。接遇のポイントは、見る、聴く、伝える、意識することで、患者とのアイコンタクトや傾聴を意識し、話し方や身だしなみにも注意を払うことが必要である。また、待ち時間に対する不満の声は多く、「お待たせしました」の一言や、誘導係の配置等の配慮が効果的となることもある。接遇は組織全体で取り組むことが最も重要で、部門間や職員間の連携が患者満足度の向上につながる。 採血はほとんどの病院で実施され、採血に携わる人も非常に多いのではないかと推測される。どの施設でも、今回講演いただいた採血の注意点を改めて確認し、より一層患者に満足してもらえるような接遇を心がけていっていただきたいと感じた。

(文責):澁川絵美

令和2年度埼玉県医師会臨床検査精度管理事業報告:2021年4月22日

生 涯 教 育 研 修 活 動 報 告 書

血液検査研究班

実施日 :令和3年 4月 22日 19時 00 分 ~ 20時 30分
会 場 :Web環境 
点 数 :専門―20 点
主 題 :令和2年度埼玉県医師会臨床検査精度管理事業報告
講演①: フォトサーベイの回答・解説 ~血液細胞鑑別ポイント~
講師①: 堀口大介(獨協医科大学埼玉医療センター)

講演②: 血液形態検査における標準化の進捗について
講師②:中山智史(防衛医科大学校病院)

参加人数:会員 52 名 + 申請中0名 + 計 52 名 
出席した研究班班員:中山智史、原誠則、網野育雄、神成千晴、軍司雅代、 澁川絵美、星聖子、堀内雄太、堀口大介 、加藤鉄平


研修内容の概要・感想など
 講演1では、堀口氏によりフォトサーベイの回答・解説をしていただいた。設問は4問あり、それぞれの回答の集計結果と共に、細胞の特徴、注意すべき検査結果について解説があった。写真1,2は伝染性単核症の症例であり、データから得られる情報を総合的に判断する必要がある点や反応性(異型)リンパ球の鏡検時のポイントについてお話しいただいた。写真3,4はそれぞれアウエル小体、有核赤血球であり、典型的な細胞の出題であった。これから血液検査に携わる人やほとんど血液像を見ない施設の方へ向けて、わからない細胞に遭遇した時にどのように対処すべきか、他の技師や担当医とのコミュニケーションの必要性など、日常に役立つ講演内容であった。また、今回は初めてWebによる回答作業であり、解答欄のミス等が数施設にあったようなので、今年度も同様にWeb回答であった際は注意が必要である。フォトサーベイの参加施設は減少傾向にあるが、より多くの施設に参加していただけるよう呼びかけた。
 講演2では、中山氏により血液形態検査における標準化の進捗について講演していただいた。血液形態検査では判定基準や共通の基準範囲などがほとんどなく、個人または施設間差があるというのが現状である。血液標準化ワーキンググループにおいて、骨髄幼若細胞分類基準が改訂され、その内容やポイントなどをお話しいただいた。以前の分類を基に細胞分化連続画像の細胞境界を確認するアンケート調査では標準化委員でも回答にばらつきがあり、各成熟段階の細胞の境界が不明瞭であったが、新たな分類基準改訂後では同じ方法で細胞境界のアンケート調査をした際に標準化委員の細胞分化一致率は向上した。新たな分類基準をもとに、顆粒球系、赤芽球系それぞれの画像を見て、実際に参加者が細胞境界を考える時間が設けられ、日常の鏡検はもちろん、新入職員の指導の際にも役立てたい内容であった。日頃の検査で、なんとなく分類してしまっていることもあると思うが、細胞の特徴や鑑別点を見直す機会となり、明日からの日常業務に生かしていきたいと感じた。

(文責):澁川絵美

2020年度 活動報告

初心者・初級者血液形態セミナー

生 涯 教 育 研 修 活 動 報 告 書

血液検査研究班

実施日 :令和 2年 11月 8日 9時 30 分 ~ 16時 30分
会 場 :女子栄養大学 坂戸キャンパス 講義室1301教室、実習室 第一実習室  
点 数 :専門―20 点
主 題 :初心者・初級者血液形態セミナー~デジタル機器を用いて血液形態を共有しよう~

講師:林 文明(シスメックス株式会社学術部)
血液研究班員

参加人数: 会員29名 + 申請中0名 + 計 29名 
女子栄養大学生 講義20名 鏡検実習9名 
出席した研究班班員:中山智史、網野育雄、原誠則、神成千晴、澁川絵美

研修内容の概要・感想など
 午前中は林氏より、リモートにて血液形態の基礎的なお話をいただき、午後からは実習室にて鏡検実習を行った。鏡検実習では3~4名に1台モニターが用意され、講師が実際に見ている目的の細胞をモニターに写すことで、受講者はそれを参考にしながら鏡検を行った。基礎から実践まで、有意義な研修会になったのではないかと思う。


≪実習を終えての感想≫
大宮双愛病院
植松 梨花
今回研修会に参加して今一度基礎に立ち返ることができ大変勉強になりました。個人的に小児科のEB疑いの血液像を見る際、
鏡検していくうちに迷うことが多かったので今回の講義で異型リンパ球の様々な形態を示すことを学び、実習で講師の方に鏡検
したのを確認して頂いて少しずつ目が慣れてきたと実感しました。
実技は鏡検をリアルで見るのに勝るのはないなと改めて感じました。基礎知識の補強し実際に鏡検することが出来明日からの業務
に生かしていけると思いました。コロナ禍においてこのような機会が得にくい中、研修会を開催していただき関係者様には感謝しています。
ありがとうございました。


川口市立医療センター
吉田 智洋
この度は、初心者・初級者血液形態セミナー ~デジタル機器を用いて血液形態を共有しよう~を開催していただき、ありがとうございました。
私は今年3月に大学を卒業し、4月から病院で働いています。そして、血液検査に配属が決定したため、血液学を勉強しています。まさに初心者なので、このようなセミナーが開催されていることを知り、とてもありがたかったです。セミナーでは、顕微鏡を用いた実習の前に、シスメックスさんの講義があり、形態の特徴等を頭に入れたうえで実際の鏡検に臨めたのでとてもよかったです。 
このセミナーを通して得られた知識を活かしながらこれからも仕事を頑張っていきます。ありがとうございました。

凝固検査機器を知ろうPart2~凝固検査のトピックスも併せて~

生 涯 教 育 研 修 活 動 報 告 書

血液検査研究班

実施日 : 令和 2年 9月 3日 19時 00 分 ~ 21時 00分
会 場 : 大宮ソニックシティ602号室
点 数:基礎 - 20 点
主 題 :凝固検査機器を知ろうpart2  ~凝固検査のトピックスも絡めて~

演題①:血液凝固自動分析装置CP3000と凝固線溶関連試薬について
    凝固検査用検体取り扱いの基礎知識も絡めて
講師①:須長 宏行(積水メディカル株式会社 カスタマーサポート センター学術企画グループ)


講演②:力学的検出原理に基づく凝固時間法を採用したSTAシリーズについて
講師②:田中 秀明(富士レビオ株式会社 テクニカルサポート課)

参加人数: 会員32名 + 申請中 0名  計32 名
出席した研究班班員:中山智史、網野育雄、原誠則、軍司雅代、澁川絵美、堀内雄太、加藤鉄平

研修内容の概要・感想など
講演①では、凝固検査の基礎知識、凝固検査のピットフォール、凝固検査用検体取り扱いに関する基礎知識、血液凝固自動分析装置CP3000と搭載試薬の順で須長氏にお話しいただき、凝固検査では採血量、採血手技がいかに検査値に影響を及ぼすかを再認識した。異常値となった時に、それが治療によるものなのか、採血量や手技によるものなのか、適切な判断が求められるため、講演内容をきちんと理解し日々の業務に役立てていきたい。また、採血管の種類や取り扱いについてもお話があり、新人教育などでも活用していきたい内容であった。搭載試薬に関しても液状PT試薬では要員の試薬溶解手技による検査値に与える誤差を除外できる利点、FDP、Dダイマー試薬では使用するモノクローナル抗体の特性により逆転現象が起こらない利点など紹介していただいた。 
講演②は、自動血液凝固線溶測定装置STAシリーズについてであり、装置仕様や特徴を田中氏にお話しいただいた。また、トピックスとしてCOVID-19と血液凝固のお話しがあり、COVID-19でAPTTが延長している症例では、LAを有している例が多い事や、COVID-19の生命予後の判定としてDダイマーが有用となる報告がある、一方で、重症化例ではPAI-1の増加により、プラスミンが抑制されDダイマーが過小評価される報告があるなどの情報提供をいただき、現在のコロナ渦での業務に大変役立つものであった。装置のお話では他の血液凝固検査装置との大きな違いとしてスチールボールの振幅の動きで凝固時間を検出する力学的原理を用いていることによって、乳びなどの濁度が強い検体でも影響されない利点などを紹介いただいた。今後の院内への装置導入の選択肢としてもどちらも魅力的な内容であった。どちらの講演も日々の業務に不可欠な内容であり、理解を深め、日々の業務に生かしていきたい。

(文責:)澁川絵美

凝固検査機器を知ろうPart1~凝固検査のトピックスも併せて~

生 涯 教 育 研 修 活 動 報 告 書

血液検査研究班

実施日 : 令和 2年 8月 21日 19時 00 分 ~ 21時 00分
会 場 : 大宮ソニックシティ601号室
点 数 : 基礎 ― 20 点
主 題 : 凝固検査機器を知ろうpart1~凝固検査のトピックスも併せて~

演題①:「凝固の基礎~線溶系を主に~全自動血液凝固測定装置CNシリーズの特性を絡めて」
講師①:栗山 広司(シスメックス株式会社 北関東支店 学術サポート課)

演題②:「DICの病態とバイオマーカー及び全自動血液検査システムSTACIA CN10の特性について」
講師②:太田 徳仁(株式会社LSIメディエンス 診断薬事業本部 営業統括部 マーケティングG)

司会:中山 智史(防衛医科大学校病院)

参加人数: 会員32名 + 申請中0名  計32名
出席した研究班班員:中山智史、網野育雄、神成千晴、堀口大介、星聖子

研修内容の概要・感想など
今回の研修会は前半を凝固線溶系の基礎知識の整理とFDPとDダイマー及びFMC、TATとPICなどについて栗山氏に、後半はDIC診断基準と分子マーカーなどについて太田氏にご講演頂いた。FDPとDダイマーは血栓形成と線溶の過程で産生される分解産物でFDP/Dダイマー比は一次線溶と二次線溶のバランスを検討する指標となり、DICの病型推定に役立つとのお話があった。線溶亢進型DICの診断の為にはPICの測定が不可欠であるが医療機関によっては即日に測定値を得られない事もあり、この様な場合にはFDP/Dダイマー比を用いる事である程度の病態を推測するのに有用と感じた。またFMCはフィブリノゲンがフィブリンに転換するマーカーとして血栓症の早期発見や薬剤治療効果の判定について活用が期待され、凝固活性化の程度はTATにより、線溶活性化の程度はPICで評価することが可能であり両者のバランスはDICにおける臓器不全などの病態と密接に関連しているとのお話があった。
DIC診断基準は診療科によって求められるDIC診断の迅速性および感度、特異度の違いにより複数基準が存在し、最新改訂版として日本血栓止血学会DIC診断基準2017年版が作成され、この診断基準では分子マーカーとしてFDPをより重要視し、加えて凝固活性化マーカーであるTAT、SF、F1+2さらに急性期DICの予後を反映すると報告があるアンチトロンビン.が採用になったとのお話があった。TATやSFなど院内測定が可能でない施設も多いが診断基準に採用する事で今後、測定の普及が期待されるのではないかと感じた。
今回の研修会では血栓性疾患の発症や早期診断、治療における凝固・線溶系分子マーカーの有用性について学べる大変有意義な講演内容となった。

(文責:星聖子)

2019年度 活動報告

血液検査に必要な基礎知識~機器の測定原理・日常精度管理で注意すべき点~

生 涯 教 育 研 修 活 動 報 告 書

血液検査研究班

実施日 :2019年 4月 18日 19時 00 分 ~ 21時 00分
会 場 :大宮ソニックシティ 601号室
点 数 :専門 ― 20 点
主 題 :血液検査に必要な基礎知識~機器の測定原理・日常精度管理で注意すべき点~

講演1:平成30年度埼玉県・埼玉県医師会臨床検査精度管理事業報告
講師1:星 孝夫(獨協医科大学埼玉医療センター 臨床検査部)


講演2:機器の測定原理・日常精度管理で注意すべき点から法改正後の精度管理まで
講師2:萩原 朋子(シスメックス株式会)
司会:原 誠則(壮幸会 行田総合病院)


参加人数:会員80名+申請中5名 計85名
出席した研究班班員:原誠則、星孝夫、網野育雄、軍司雅代、蔵光寛行、渋川絵美、中山智史、石井千晴

                   
講演1では、平成30年度埼玉県・埼玉県医師会臨床検査精度管理事業のフォトサーベイについて出題者から、解答の提示と解説でした。特に、異常細胞については名称の由来や形態的特徴、関連する疾患まで解説がありました。日常で見かける細胞については、正答率は高く、異常細胞の正答率は低いという、日常的に出会う機会の少ない細胞に弱い傾向がみられました。今回のフォトは、国家試験で高頻度出題細胞を参考に選ばれたそうです。異常細胞は知らなければ見逃してしまうので、これを機会にアトラスや教科書で復習してみるなど、外部精度管理を活用してみてはどうでしょうか。
講演2は、血算機器の測定原理と精度管理ということで講演いただきました。機器の測定原理を知っていると、数字を追いかけるだけでなく、スキャッタグラムやヒストグラムからも有意義な情報を読み取れることが増えると改めて感じました。精度管理について、なぜ精度管理をするのかを基礎から学び直す機会となりました。法改正によって関心度が高くなった精度管理ですが、私たちの検査の質を保証する為に欠かせないものです。内部精度管理・外部精度管理ともに取り組んでいきましょう。

(文責:石井千晴) 

採血を行う上での接遇と安全対策~コミュニケーション能力と患者満足度向上のために~

生 涯 教 育 研 修 活 動 報 告 書

血液検査研究班

実施日 :2019年 6月 20日 19時 00 分 ~ 21時 00分
会 場 :大宮ソニックシティ 603号室
点 数 :専門 ― 20 点
主 題 :採血を行う上での接遇と安全対策~コミュニケーション能力と患者満足度向上のために~
講 師 :高橋 徹(極東製薬株式会社)
司 会 :蔵光 寛行(埼玉県立がんセンター)

参加人数:会員125名+申請中2名+賛助会員1名 計128名
出席した研究班班員:原誠則、星孝夫、軍司雅代、蔵光寛行、渋川絵美、中山智史


 今回の研修会は、「採血を行う上での接遇と安全対策」というテーマで、高橋氏にご講演いただいた。厚生労働省の調査では、何を理由に病院を選んでいるか?の質問に、「医師や看護師が親切」が外来で4位、入院で3位に挙がるという。採血時の安全対策の重要性は言うまでもないが、接遇も軽視できない内容であることがうかがえる。
 まず始めに、採血現場における接遇について、採血前・中・後の具体的な流れに沿って詳しく解説していただいた。総じて声掛けが大切とのことであったが、言葉だけでは不十分で、印象度としては、聴覚情報(声の大きさ、速さ、口調)や言語情報(話の内容)よりも表情や視線、身振りといった視覚情報の方が強いということであった。
 次に、採血合併症として神経損傷、血管迷走神経反応、皮下血腫・止血困難、アレルギー・過敏症について、それぞれ原因、頻度、対応、予防に至るまでを丁寧に解説していただいた。特に対応や予防はとても具体的ですぐに役立つ内容であった。また、採血によって合併症が生じうることを、ほとんどの患者が認識していないことにも注意が必要であることを説明していただいた。
 最後に標準採血法ガイドラインについて、動画を交えながらポイントごとに解説していただいた。採血手技に関して、普段知っているつもりでいても、注意すべき穿刺部位や採血管の順序、採血法(採血針・翼状針、ホルダー・注射器)の利点や欠点など、実際には曖昧で不安な部分が多くあることに気付かされた人も多くいたのではと思う。講演では、溶血や駆血、採血量や体位といった採血手技が測定値に与える影響についても詳しく説明していただいた。
 採血について、普段なかなか学べる機会は少ないと思うので、採血に関わる一通りの事柄をまとめて勉強でき、とても有意義な研修会であった。
(文責:蔵光寛行)

知って役立つ凝固検査のポイント

生 涯 教 育 研 修 活 動 報 告 書

血液検査研究班

実施日:2019年 7月 12日 19時 00 分 ~ 21時 00分
会 場:大宮ソニックシティ 601号室 
点 数:専門 ― 20 点
主 題:凝固検査の基礎・基本
講 演:知って役立つ凝固検査のポイント
講 師:須長 宏行 (積水メディカル株式会社)
司 会:中山 智史 (防衛医科大学校病院)

参加人数:会員65名+賛助会員5名 計70名
出席した研究班班員:原誠則、星孝夫、網野育雄、軍司雅代、蔵光寛行、渋川絵美、中山智史、星聖子、石井千晴

 凝固検査の基礎・基本ということで、講演頂きました。正しい検査は、正しい採血からということで、改訂された採血ガイドラインGP4-A3で注意すべき点をあげていただきました。推奨の強さが3通りに統一されたこと、「予防」が追加され、「補遺」で合併症や採血手技が検査値に与える影響などが明記されているなど、採血をしているのであればガイドラインを知らないでは済まされないので、読み返そうと思います。
凝固検査は検査取り扱いの標準化が進んでおり、採血から測定するまでの時間、温度、遠心条件、分離・保存・解凍方法など細かく提示されています。その根拠を検証結果など具体的に説明頂けたので、わかりやすかったのではないかと思います。凝固検査で異常値が出た場合、先天性疾患やDIC(播種性血管内凝固症候群)など病的な時の他に、抗凝固薬のワーファリンやヘパリンの治療コントロールの指標としても重要です。新しい抗凝固薬DOACは、薬物動態にも気を配る必要があり、異常値の検査結果の解釈は注意が必要で、採血の状況はどうだったか、病状や治療状態などの情報共有のため臨床側とコミュニケーションをとることが必要だと改めて感じました。また、凝固から線溶までの過程は、フィブリンを中心に考えていくと理解し易いという解説が図を提案して下さり、凝固カスケードでくじけてしまい凝固アレルギーになってしまった人たちには、凝固検査を理解する為のヒントをもらえたのではないでしょうか。                    

(文責:石井千晴)

CMLの検査から最新の治療戦略~知識から理解へ~

生 涯 教 育 研 修 活 動 報 告 書

血液検査研究班

実施日 :2019年 9月 6日 19時 00 分 ~ 21時 00分
会 場 :大宮ソニックシティ604号室
点 数 :専門 ― 20 点
主 題 :CMLの検査から最新の治療戦略~知識から理解へ~
        
講演1:CMLの理解を深めよう~形態学を中心に~
講師1:新保 敬(獨協医科大学病院 臨床検査センター)


講演2:CML治療 最新トッピックス
講師2:佐々木 光(獨協医科大学病院 血液腫瘍内科 准教授)
      
司会:星 孝夫 (獨協医科大学病院埼玉医療センター)

参加人数: 会員 70名 計70名
出席した研究班班員:原誠則、星孝夫、圓田 和人、網野育雄、軍司雅代、蔵光寛行、渋川絵美、中山智史、星聖子、石井千晴


 慢性骨髄性白血病(CML)の検査から最新の治療戦略をテーマに、新保先生から、検査室でCMLを見逃さない為に、末梢血液の血算データや生化学データ、自動分析装置のスッキャッタ―から読み取れるCMLの特徴を、実際のデータや経験値を踏まえて講演していただきました。形態の解説では、鑑別すべき疾患の真性赤血球増加症(PV)や本態性血小板血症(ET)についての解説を交え、実際の骨髄像の鏡検動画を症例ごとに流して下さり、弱拡大で見るべきポイント、強拡大で注意してみる形態的特徴を、大変分かりやすく解説いただきました。講演用にゆっくり観察している動画との事でしたが、私にはとても速く感じ、鏡検数の違いを感じました。                           
 佐々木先生には、CMLの治療と最新の情報について、これまでのCMLの病態解明の歴史と治療戦略の変遷を熱く講演していただきました。対処療法しか手立てがなく、予後不良だった時代から飲み薬によって急性転化を防げる時代となり、さらには服薬を中断しても再発せずに過ごせる患者さんがみられ、世界中で行われている検証中の研究データもたくさんお持ちくださり、成果と問題点を解説してくださいました。いつの日かCMLは治る病気といわれる日がやってくるのではないかと思い、医療の進歩は目覚ましく、新しい知識を得ることの重要性と楽しさが分かりました。研修会後、参加者から「面白かった」とつぶやきが聞こえ、満足度の高い研修会になったと感じました。
(文責:石井千晴) 

敗血症とDICの定義と診断基準~分子マーカーとバイオマーカーの見方・考え方~

生 涯 教 育 研 修 活 動 報 告 書

血液検査研究班

実施日 :2019年 10月 18日 19時 00 分 ~ 21時 00分
会 場 :大宮ソニックシティ 601号室
点 数 :専門 ― 20 点
主 題 :敗血症とDICの定義と診断基準~分子マーカーとバイオマーカーの見方・考え方~


講 師 :神永 紗由里(株式会社LSIメディエンス診断薬事業本部学術部学術グループ)
司 会 :澁川 絵美 (自治医科大学付属さいたま医療センター)

参加人数: 会員 56名 計56名
出席した研究班班員:原誠則、庄司和春、星孝夫、軍司雅代、澁川 絵美、星聖子、石井千晴


 血清研究班と合同で「敗血症とDICの定義と診断基準」の研修会を開催しました。
まずは、止血機構の一次止血がおき、フィブリン形成する二次止血、そして線溶系によってフィブリノゲンが分解される仕組みを追って、通常の血栓分解で起きている様子をイラストとアニメーションでおさらいし、凝固・線溶系の分解産物を確認しました。それをふまえDIC(播種血管内凝固症候群)は、凝固と線溶のバランスが崩れたために、出血症状と臓器障害のどちらの病態をとるため、診断基準が各方面の学会からでていおり、使用する診断基準や基礎疾患によってスコアに差がでるため、自施設で即時検査結果の出せる項目に何が要求されているか、臨床の要望を確認する必要を感じました。
DICの基礎疾患である敗血症は、「感染により臓器の障害が起こっている状態」という新定義のもと、日本版敗血症ガイドライン2016を使用した診断の流れは提示されているが、qSOFA、SOFAは確定診断になるが迅速性に欠ける心配があり、SIRSは発熱や白血球数増加などの生体反応であるため感染を疑うツールとしては有用性があるが、ハイスコアになる病態が多すぎるなどの問題点がある。有用なバイオマーカーが求められる中で、今回はプレセプシンの紹介でした。産生機序に特徴があり、感染早期から高値になり、定量変化をみると重症度や予後予測にも応用が期待されるとのことであり、今後注目の検査項目になるのではないかと期待感がもてました。
(文責:石井千晴)